てすかとりぽか

最近はポケモンのことを書く場所です。

『セカンドライフをよむ。』 邪気眼的世界

"歩くとき、私たちは重力をうまく利用している。地球の重力がなければ、また、地面の抵抗がなければ、私たちは動くことができないだろう。だからこそ、夢の中では飛ぶことができるのだ。だからこそ、夢の中では走るのが難しいのだ。私たちが前進するには、重力も摩擦も必要なのである。"

セカンドライフを読む。

ティム・ゲスト著。上に書いてある「なんか俺いいこと言った」的な文から読み取れるように、仮想世界に対し、極めてニュートラルな視点で紡がれたドキュメンタリー本。仮想世界は、現実世界で失われたもの、得られないものを得ることができるという意味で魅力的だが、同時にそこで失うものも少なくはないとか、なんかそういう感じの内容。

既に半年前に出版された本なので、栄枯盛衰が著しい仮想世界に関する本としては、既にだいぶ古い情報に基づいて書かれてはいます。ただ、特筆すべきは、その他大多数の仮想世界関連書籍が、確たる根拠も示さずに「仮想世界は絶対成功する!仮想世界マンセー!」的な内容であるのに対し、しっかりとその影の部分を描いているということです。

例えば、規約違反行為どころか現実世界の法律に触れることをも厭わず、運営会社や警察が手を出せないことをいいことに、詐欺や不正アクセスを繰り返す犯罪者の存在。それらが組織的に仮想世界に介入し、利益追求のためにマフィア化しているということ。さらに、全力で他人の不幸を望み、他人を貶めることを至上目的としているグリーファー(迷惑行為者)の存在などなど、実際に彼らの考え方や主義主張に至るまで、私見を挟むことなく掲載しています。

ただ、正直「現実ならすぐに捕まり法の裁きを受けるようなことであっても、仮想世界の中ではそういうことが全て許されてしまう。運営会社は、犯罪行為に対して、しかるべき対応を行なうことができない。」とまで言ってしまうのは、防犯対策上流石いかがなものかとは思いますが。

確かに、『セカンドライフ』においては、不正アクセスの被害にあったとしても、運営会社であるリンデンラボ社並びに警察の調査によって、犯罪行為が立証されるようなことはまずないと思われます。ただ、それを「リンデンラボがFBIに捜査要請したのはデマであり、リンデンラボの社員もそれを認めている」とまで書いちゃったよこの人。

その上さらに、某オンラインゲームで、違反行為と知りつつ仮想通貨のデュープ(データ改竄による偽造)を行い、それをRMT(現実世界のお金で売買すること)により巨額の富を得た少年が、結局アカウントの凍結を受けただけで済んでしまい、他には何の責任追及もなかった。…なんてことを書いちゃうのよ。

その上さらにさらに、現実世界の未成年の少年少女を雇って、仮想世界内で「児童売春業」を営んでいるような輩に、「金が稼ぎたいなら仮想セックスをすればいい。現実の法が適用できない仮想世界で真面目にビジネスしようとしてるやつなんて、正直頭がおかしいんじゃないのか?」とまで言わせてしまう。

言ってることはある意味間違ってない。残念ながら間違ってないんだけど、そういうことを影響力のある人間が書いちゃダメ!私見さえ挟まなければ何を書いてもいいってのは、まともなドキュメンタリーじゃない!

あえて、影の部分に触れることで、プレイヤーに自己防衛の手段を講じさせたり、運営会社に問題意識を抱かせることによって、サービス全体の質を向上させたいという目的があるのならわかりますが。(自分が仮想世界に対して口を酸っぱくしてるのはそういう理由なんだからねッ!)

なんか、どう考えても「ろくでもない人間」が入って来やすいようなエサを撒いてるとしか思えない。毎日新聞の海外版と一緒ですよ!ていうか、本当にろくでもない人間が多いなーと思ったら(勿論、周囲にいる人はろくでもなくなんかないですよ。)やっぱり、こういう「無法地帯」というか「悪の理想郷」みたいな話を聞いて、その「邪気眼ワールド」に憧れてしまう奴らがいるんですね。

んでも、とりあえず『セカンドライフ』をはじめ、『World of Warcraft』や『Ever Quest』など、広い意味での「仮想世界」全般に関して、具体的な数字やデータに基づいた知識を、てっとり早く身に着けたいという方には非常にオススメな本です。少なくとも、「仮想世界マンセー!」なうさんくさい本を10冊読むよりはためになります。

でも、コミケで売る漫画は、典型的「仮想世界マンセー!」なうさんくさい漫画だよ。

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追記。そういう「邪気眼ワールド」的な仮想世界を考えてみた。とりあえず、アバターは普通の高校生だが、実は秘められた闇属性の攻撃力を秘めていたりする。そして、ものすごいダークパワーの持ち主であるため、意思とは関係なく名前に「ダーク」とか「闇の」とかついてしまう。とりあえず、初めて会った人への挨拶は「お前もチカラの持ち主らしいな…」。さらに、「オレは誰ともつるむ気はない…」とかいいつつ、ずっと後をついてくる。