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『20世紀の幽霊たち』 謙虚

日に三食とも恵方巻でした。だって、他に食べ物売ってないんだもの…。

20世紀の幽霊たち

アメリカの作家、ジョー・ヒル著する短編小説集。
この作家を語る上で、まずその数奇な肩書きに触れずにはおれません。

"かのスティーヴン・キングを父に持ちながらも、それをひた隠しにしている。"

へぇ、そうなんだ。そんな凄い親を持ちながら、その威を借ることもなくなんて謙虚な人だ…。
なんて思うわけないじゃん!全然隠してないだろ!!一行目に親の名前出してるだろ!!!!!

でもね、世の中そんなにひねくれた考え方する人間ばかりじゃありませんから。
大抵の人はそのキャッチコピーみて「あらやだ。なんて謙虚な作家さんなのかしら。」と思います。
謙虚さを仄めかしつつも、しっかり親父の名前は前面に押し出しているのです。

「おれは別に親父の名前などアッピルしてはいない。」
「本当にすごい小説家は親父の名前を口で説明したりはしないからな。」
「おれはS・キングの息子だってひた隠しにしているし。」

素直に、これはすばらしい売り出し方だと思います。
どうせなら、あの吾朗なんかも親の名前をひた隠しにすれば好かったのに。

"かの宮崎駿を父に持ちながらも、それをひた隠し、反対を押し切って『ゲド戦記』を撮影。"

ひゃー!かっこいー!しかも、謙虚なのは態度だけじゃなくて、才能までも謙虚!!素敵!!
次は絶対これでいきましょうよ。あの鈴木ってプロデューサーならやりかねないよほんとに。

とか、こんな風なことばかり書いててもアレなんで、そろそろ本題に入ります。まず、この本の作りには大層不満があります。まず、序文からして、各短編を一言で要約しちゃってるとはどういう要件でしょう。次に作者からの謝辞。「謝辞の中に小説を書いちゃうなんて、世界初じゃないカナ〜!」とか。そういうの、いいから後にしてください。

いいから早く本編を読ませろ!!

でもでも、本編の方がこれまた好いので困ります。書名にもなった短編「二十世紀の幽霊」は勿論のこと、風船人間との友情を描いた「ポップ・アート」しかり、蝗人間になった主人公の話である「蝗の歌をきくがよい」、精神病の弟にひそむクトゥルーっぽい闇を描く「自発的入院」など、根本的に不条理な話を異常なまでに現実っぽい表現で描き倒しております。

個人的に一番好かった短編は「ボビー・コンロイ、死者の国より帰る」。

物語の舞台設定と登場人物が凄い。映画『ゾンビ』の撮影現場で、監督のジョージ・A・ロメロと特殊メイクのトム・サヴィーニが撮影を行なう中、ソンビ役のエキストラである主人公男女の愛憎と心情の変化を、骨肉と内臓と血糊とともに見事にぶち撒いた作品です。撮影の進行に関する描写がこれまたリアルなので、作者は実際に現場にいたんじゃないの?これはルポタージュなんじゃないの?と錯覚させられてしまいました。

というか、是非これ映画化してほしいと思いました。
完全に新しいアプローチのゾンビ映画になると思いますよ。