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『会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ』

会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ

齊藤正明著。ひょんなことからマグロ漁船に乗ることになった著者が、海の男たちやその生き様から学んだ人生にとって大事なことをそこはかとなくですます調で綴った本。ですます調の文体は、どんな殺伐とした話でもなんかほんわかな感じになるので好きです。『指輪物語』とか。

マグロ漁船というと、いかにも借金のカタに送り込まれるような、エスポワール号やペリカ王国のさらに下の下の地獄の底ってイメージがありますが、まずそういうとこではないよってことを本書は教えてくれています。あと、大金が儲かるとか一攫千金とかいうのももう30年以上昔の話だってことも。

そういう話を期待してた自分は世界中のマグロ漁船にごめんなさい。

むしろ、そこで働いている人たちはとっても博識で、聡明で、皆自分なりの哲学を持って生きている感じです。そういう善き人間の形成と海と船とマグロとの因果関係とかはよくわかりませんが、この本を読む限りではマグロ漁船には非常に魅力的な人たちが乗っていて、とっても魅惑的な職場に感じられます。

じゃあ、漏れも漏れもマグロ漁船に乗ろうすぐ乗ろう。
今の仕事のくそつまんねー仕事も上司も仕事も辞めてすぐ乗ろう。

と、この本を読んで思っちゃう人もいそうですが、そういう人は結局マグロ船に乗ってもくそつまんねー仕事としか感じないでしょう。何より、この本の魅力はその著者のマゾっぷり。マグロ漁船に乗って毎日吐いて怒鳴られて貶されてなお、その中に「人間の愛」を見出してしまうポジティブさです。

この著者が『蟹工船』に乗ってたら、だいぶ違う話になってたはずです。
「毎日おいしいカニ汁を飲ませてくれてありがとう船長。」って。
小林多喜二にも資本主義の犬として優雅な余生を。

要するに「柔順な人間の強さ」について書かれてる本なんですよねコレ。「反骨精神こそ正義!柔順さは悪!」とか「一歩でも引いたら負けだ!」とか言ってる人に限ってどんどん先にリタイアしていくのをもう何例も何例も見てきた自分的にも、ある種の真理を感じざるを得ない内容です。

むしろ、この著者にもっと過酷な仕事してもらって、人生で大切なことをどんどん見つけてもらいたい。
「会社人生で必要な知恵はすべてチェルノブイリで学んだ」とか。

そして、自分もいつか「人生で大切なことはMMORPGで学んだ」とか書けたらいいなと思います。
MMORPGやってなかったら今の仕事してないからほんとにたくさん学んだと思います。
MMORPGやってなかったら多分今頃無職ニートで家でMMORPGやってます。