てすかとりぽか

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『ザ・ムーン』 陰謀論

ザ・ムーン

2007年のイギリス映画。デヴィッド・シントン監督。

人類初の月面着陸を行なうアポロ計画に関するドキュメンタリー映画で、同計画に参加した宇宙飛行士の生々しい体験談や美しい映像を交えつつ、その計画の発端から終結までを詳細に追った物語。今更ながら始めて観たような貴重な宇宙映像もたくさんあって、こういうリアル宇宙モノ好きには垂涎の内容です。

でも、そもそもなんで今更アポロ計画のドキュメンタリー化なんだろう?

その理由は、映画のラストのエンドクレジットにありました。なんと、月に行った宇宙飛行士全員による「アポロ計画陰謀論」に対する反論で締められていたんですね。どうやら、近年になって急激に湧き上がったこの陰謀論に対する反証としての製作意図があったのではないんでしょうか。

そもそも「アポロ計画陰謀論って何ぞ?」って話ですけど。

人類が月面着陸したというのは、アメリカの嘘(でっち上げ)であるという説のことです。その論拠は、「月面は真空なのに旗がはためいているから」とか「宇宙に星が映っていないから」とかいうものなんですけど。ちょうど、一年前ぐらいに、日本でも何かの番組内で大槻教授がこの陰謀論を支持してましたね。

単純にその陰謀論に従うと、この映画を全部CGで作るのに一体何兆円かかるだろうという話。

「いや、この陰謀にはNASAやらアメリカ政府も絡んでいるからそれぐらいの金は余裕で出せるはずだ!」とかいう反論は出そうですけど。(むしろ、個人的にそういうおバカ陰謀論って大好きなんですけど。)だったらもっと映画にプロモーション費用も使おうぜって話。いい映画なのに、国内じゃほとんど放映館なかったし。

ちなみに、陰謀論についてはこちらのブログでわかりやすく触れられています。
"アポロ陰謀論とかいう以前に(山本弘のSF秘密基地BLOG)"

しかしまぁ、その陰謀論を展開している"小学生レベルの科学知識すら持ち合わせていない"世代って、アポロ計画が終了した1975年以降に生まれたウチらの世代なんだと思います。それ以前の人は、少なくともテレビの生放送で月面着陸という大イベントを目にしてたわけでしょう。否応なしに知識つきますよ。

逆に、ウチら「貧乏クジ世代(現在20代後半〜30代前半)」が知ってる宇宙方面の科学知識って、『ガンダム』とか『スターウォーズ』とかのSFぐらいなもんですからね。うっかりまだ『ドラえもん』の方が本格的な科学知識に基づいて描かれていたりするぐらいです。そりゃあ、小学生レベルって言われても仕方ないですよ。

前世代のツケを払わされてる身としては、前世代の功績をでっちあげ呼ばわりしたくなるのはわかります。

ただ、この映画で本当に素晴らしいのは、「信頼」することの大切さです。どんな映画でも少年ジャンプでも「信頼」をテーマに扱ったものは多いですし、もはや商品のプロモーションに使うにしてもありふれた言葉すぎますけど。実際に会社でチームをまとめるような仕事をしてみて、その難しさがわかります。

「自分ひとりが絶対にミスをしない。」ということでも相当難しいのに、「チーム全体が絶対にミスをしない。」なんて絶対に無理だと思う。でも、「チーム内で一人でもミスをしたら死ぬ。」って状況を切り抜けるために、アポロ計画の皆さん方が一番大事にしてたのは、その知識でも技術でもなく「信頼」なのでした。

「友情・努力・勝利」だとなんか軽いんだけど、リアルで「信頼 or 死」だと重みが違います。

しかも、いくら全員でミスをしなかったとしたって、機械の故障で全滅することだってあります。月面着陸後、一個しかない着陸船のエンジンが故障した場合、そのまま地球には帰れずに全員死ぬことが確定するんですけど、そんな場合に備えたテレビ用の告知文なんかもあらかじめ用意されてたんですね。

アポロ11号の勇敢な乗組員2名は、月面で静かな眠りにつくことになりました…。」

とか、まじ泣けてくるんでやめてください。過去系じゃなくて現在進行形で人の死を伝えるのは…。