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『スラムドッグ$ミリオネア』 アタック25

スラムドッグ$ミリオネア

2008年のイギリス映画。ダニー・ボイル監督は『28日後』とか『トレインスポッティング』の。

ひょんなことから『クイズ$ミリオネア』に出演した、スラム出身で無学な青年ジャマール。周囲の予想に反して順当に正解を重ね、賞金最高額2000万ルピーまであと一問と迫り、番組は次回へつづく。しかし、彼はチート容疑で警察に逮捕されてしまう。彼がなぜ正解を知りえたのか、彼が語りだす彼の人生の物語。

『クイズ$ミリオネア』ってあの「ファイナルアンサー?」ってやつですが、みのはでてきません。

あれは元イギリスの番組で、世界各国でやられてるので、そのインド版のお話。でも、ルールは全く同じで、4択クイズで1問づつの賞金倍増方式。「ライフライン」という3種類の救済措置もあり、それがまた物語の重要な役割を果たしてるあたり、クイズ番組ならなんでもよかったってわけじゃないですね。

『アタック25』とかじゃ駄目だったわけです。

先ず、総評としては今年観た映画の中では最高に面白かったです。日本の路上生活者なんか比較になんないぐらい劣悪なスラムに育つ主人公らが、その荒波に贖って生きる姿の描写だけでも、そんじょそこらのお涙頂戴貧乏物語なんか目じゃない。それらが、1秒の無駄もなく物語の本筋に絡んできます。凄い。

そして、何より超がつくほどキッタナイはずのムンバイの街の美しいこと美しいこと。実際、インド人が「こんなにキッタナクねーよ!」って怒ったって話ですから、そこは作為的な描写ではあるんですけど。街、空、ドブ河、緑、そして人々の強烈な原色で彩られた世界は素晴らしく綺麗。バンコクで見た風景にデジャブ。

さらに、ジャマールとヒロイン・ラティカの純愛。個人的に昨今の純愛悲愛を描いたケータイ小説的な映画なんてサブイボが立つしもう死んどけって感じなんですけど。ここまで人身売買や小児性愛、売買春、強姦がデフォな肥溜めみたいな世界だと、その純粋さが光るわ光るわ。陳腐な言葉ですけど、感動しました。

でも、その感動は先進国の人間から見た圧倒的優越感に起因するものだってことも確かです。

今作が昨年度オスカー最多受賞となったのも、その"西欧世界の優越感を強烈に満たした"ことが理由と言われてます。これまで、ヘビーな人間ドラマやユダヤものが圧倒的に強かったかの賞の受賞作において、今作は明らかに異色といわれてますが、根底に流れる「かわいそがり」という精神構造はおんなじです。

悲しい話ですが、人間は自分より下のものを観て安心を得るいきものです。

格差社会と言われる今だからこそその性質も顕著に現れ、みんな自分より底辺にいる人を見ては「自分はもっとましだ」と思って安心します。社会の底辺にいる無職ニートな人は、さらに中国や韓国など隣国に目を向けます。でも、中国にすら負けているとわかると、さらにソマリア南アフリカにまで目を逸らします。

人類皆平等なんて嘘っぱちで、みんな格差が大好き。

話が逸れすぎましたが、そんなムンバイも急激な経済成長を遂げ、今やアジア経済の中心。主人公が勤めてるみたいなコールセンターも、世界中の企業がここムンバイにおいてます。世界最大のMMORPGWorld of Warcraft』のGMサポートをしてるセンターもここにあるらしい。英語圏でかつ人件費が安いのが理由だそうです。

某社のサポートに電話かけると、カタコトの日本語の人が出るのも同じ理由です。あれは中国ですけど。

主人公の回想を通じて、そうしたインド社会の大きな移り変わりをさりげなく描いている、いわば『フォレストガンプ』的な側面も、今作の面白さだと思います。で、当のインドでの評価はどうなのかというと、やっぱり「こんなにキッタナクねーよ!!」って感じで散々らしいです。そりゃ、そーですよね。

フランス人が観た日本を描いた『WASABI』が散々だったみたいなもんですね。