てすかとりぽか

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『サマーウォーズ』 一億総サブカル

サマーウォーズ

2009年の日本のアニメ映画。細田守監督作品。

時をかける少女』の監督さんなので興味はあったのですが、「スーパーハカーがバーチャルワールドの危機を救う」という、なんとも個人的に好きになれそうにないストーリー概要を聞いて劇場公開時も敬遠してしまっておりましたが。DVDが出て以降聞く意見が「超おもしろい」と「糞ツマンネ」のほぼ二択なので観てみました。

率直に感想を述べますと、滅茶苦茶面白かったです。

絵がキレイとかよく動いてるとかは別にしても、予想以上にバーチャルワールド(以下「仮想世界」と表記)に関する描写が掘り下げられていて、予想以上に「田舎の大家族」に関する描写もリアルで。その本来関連なさそうな2つのコミュニティを相互に行き来しながら、テンポよく収束していく物語に惹きつけられっ放しでした。

ただ、「この映画が嫌い」という人のキモチも、なんとなくわかりました。

一般人に向けて売ろうとしている映画にしては、いかんせんサブカル臭が強すぎます。まぁ、仮想世界というサブカル極まれるテーマを選択してる時点で、その臭いをさせるなってのは無理な話なんですけれども。一般人でもオタクでも、毛嫌いする人多いですからね、そういう立ち位置が微妙な作品って。

なんせ、世界設定が「一億総サブカル化した日本」ですからね。

いやもう日本に限らず、世界中の何億と言う人間が一つの仮想世界に接続し、そこで買い物やコミュニティを持ちつつ、生活インフラすら依存する世界だなんて。ユートピアSFとして観ても、発想が現実からかけ離れすぎてますからね。そいでまた、その世界のデザインがまたサブカル好きしか喜ばなそうな感じだし…。

そもそも、一億総ってなった時点で、サブカルチャーじゃないですよね。メインカルチャーですよね。

じゃあ、この世界におけるサブカルって…。自分のサブカルに関する認識がややずれてることを承知で言うなら、本来の世界において、多数派(非オタク)が支持する文化にあたるわけですね。音楽で言うなら、エグザイルとか倖田來未あたりでしょうか。ケータイ小説読んで「超なける〜!」って言うのもサブカルですね。

映画館から「ジョニデ最高〜!」って言いながら出てくるのが、サブカル少女たちなわけですね。

そして、この世界における国民的RPGと言えば『真・女神転生』。小学生はみんな『デビルチルドレン』で遊んでて、600万本以上売れてます。アトラスはゲームソフトの世界シェア25%を占める超優良企業で、ハードではセガの『ドリームキャスト』が全盛。任天堂なんかただの花札作ってる町工場レベルですよ。

もちろん、政権与党は共(自主規制)。

そんな対抗文化大逆転な仮想日本で繰り広げられている物語として観てしまうと、面白くないわけがないんですけれども。逆にあんな感じの仮想世界マンセーな世の中は未来永劫訪れないだろうってのが、ここ数年の間にはっきりしちゃったのは悲しいお話ではあります。仮想世界はもうずっとサブカルなまんまです。

だって、インターネットで十分なんだもの。

仮想世界の特徴と謳われる「3次元空間とアバター」について、社会生活上における必要性と合理性を証明できない限り、仮想世界が産業としてのスタートラインに立つことすらありえません。事実、一部の業界ゴロが食いものにしているような虚業としての実態は、自身が仮想世界をテーマにした作品を毛嫌いする一因です。