てすかとりぽか

最近はポケモンのことを書く場所です。

『Dr.パルナサスの鏡』 キチガイ地獄外道祭文

昨夜はテレビで『ハウルの動く城』をやっていたので観ました。

こういうことを言うと怒られるかもしれませんが、個人的に『ハウル』はものすごい駄作だと思ってます。そりゃあ、映像は世界トップレベルにキレイだし、常人には意図を測りかねるような物語描写もマニア垂涎の要素だとは思うのですが、やっぱりあの脚本のやっつけ感は筆舌に尽くしがたいと感じてしまいます。

ラストの横暴さなんて、他の監督がやったら一生映画撮れない体にされちゃうと思うのです。

それでも売れたから別にいいんですけど。なんだかんだで観てて楽しいし。ただ、そんな内容になってしまった要因としては、やっぱり監督が本当に作りたかった世界と、あくまで商売でなくてはならない映画という形の間に深い溝があったのだろうと思います。以下の作品にも同じ感想を持ちましたので。

Dr.パルナサスの鏡

2009年のアメリカ映画。テリー・ギリアム監督作品。

未来世紀ブラジル』、『バロン』、『フィッシャー・キング』、『12モンキーズ』。このラインは、自身が映画好きになった理由の原初体験にあたる部分なので、ギリアム監督のことは心から崇拝しております。しかしながら、その後の作品群は嫌いでこそないものの、何か本来のギリアム節が影を潜めてしまっていました。

ローズ・イン・タイドランド』は、ある意味“黒ギリアムここに極まれり”な気もしないでもないけど。

そんな中、本作は久々に「キレーはキタナイ キタナイはキレー」を地で往く、ギリアム的「キチガイ地獄外道祭文」な幻想世界が帰ってまいりました。まるで精神病患者の…じゃなくて、ちゃんと映画評っぽい感じで言うのであれば、非常に独創的なすばらしい映像表現が非常にすばらしい映画ということです。

マジレスすると、映像はキレイだけど、よくわかんねー映画だったということです。

いや、でも「そのよくわかんねー感じがギリアム的で好い」って言う意見も理解りますし、何より本作の撮影中に急逝されたヒース・レジャーは大好きな俳優さんなので、あんまり頭ごなしにdisるのはよくないと思います。なので、せめてその脚本上の論理的整合性がとれてないという部分だけを語ることにしましょう。

その理由のひとつ目は、やはりヒース・レジャーの突然の死にあると思います。

主役を演じるヒース・レジャーの死により、映画製作自体が一度は不可能となったところ、急遽ヒースを敬愛する3人、ジョニー・デップジュード・ロウコリン・ファレルが代役を申し出たという美談により、撮影が続行されたというのは本作に関するネタとしては一番有名なところなんですけれども。

むしろ、この話をショウビズカウントダウンで聞いて、この映画の存在を想い出したぐらいのネタ。

で、まだ撮影が終わっていなかった“3つある鏡の中のシーン”を3人がそれぞれ1度づつ代役を務めたという話なんですけど。それってさすがに話ができすぎでねーですか?と思っています。おそらくは、代役3人のために急遽“3つのシーンの脚本をつけたした”か、3つのシーンに併せて“3人を集めた”ってことじゃないかと。

後者だとすると、せっかくの美談が台無しなので、前者であってほしいとは思っています。

いずれにしても、脚本の大幅な改変は免れなかったんじゃないのかなとは思ってます。逆の言い方をすれば、脚本の改変ぐらいで映画が完成できたんだから御の字でしょうと。ただ、結果的にわかりづらくて、かつ整合性を欠いたストーリーになってしまったというのは、ある意味仕方のないことなのかもしれません。

そして、脚本がアレな二つ目の理由。それが、まさに『ハウル』と同じ性質のものだと感じています。

正しくは、『ハウル』以降の宮崎駿監督作品と共通する性質。監督が魅せたいもの伝えたいものと、映画という“商売としてなりたたせなければならない”間の溝をどーしても感じてしまいます。監督が魅せたい幻想世界の描写と、ちゃんと物語として整合性がとれなければいけないと思うプロモーション側の思惑の違いというか。

「監督のやりたいことをやらせつつ、映画として売るためにハッピーエンドにしなければならない。」

だから、『ハウル』だって広げた大風呂敷を無理矢理5分で畳んでハッピーエンドにしてるし。『ポニョ』だって、いきなり地球の危機みたいな話になって「愛が地球を救う」みたいなオチになっちゃったし。そういう意味では、本作はだいぶ序盤の方から、もう「この人たちは一体何をやってるんだ?」的な話になってましたし。

「いや、それはお前の読解力がねーからだろ!ふつーに観てれば理解できるだろ!?」

とか、もしかしたら言われるかもしれませんが。なにぶん、昨日から37度代という決して心配はしてもらえないけど本人的にはツライという微妙な発熱があるので、単に自分に読解力がなくなってるというだけかもしれません。昨日の『ハウル』だって、いきなりババアになったと思ったら、また若返ってた理由わかんなかったし。

ただ、本作の「慈善事業ロンダリング」の部分は、さすがに説明をはしょりすぎだと思いますよ。

要は、犯罪によって得られた収益金の出所などを隠蔽するために、慈善事業に投資をし資金洗浄を行うという“マネー・ロンダリング”のことを指してるんだと思いますが、それだけわかっても、やっぱりそれが何故主人公を破滅と記憶喪失に追い込んだのかという説明がはしょられ過ぎていて、よく考えてもよくわかりません。

まぁ、難しいこと考えないで、映像だけ楽しむのが一番だと思うんですけどねー。
とりあえず、今日から9連休なんでなにもかんがえないぞー。