てすかとりぽか

最近はポケモンのことを書く場所です。

『マイレージ、マイライフ』 ゲイの犬の声やってた人

Twitterの“2010年のマイベスト映画”TLの中で多く見かけたので観ました。

マイレージ、マイライフ

2009年のアメリカ映画。ジェイソン・ライトマン監督作品。

主人公のライアンはとあるリストラ代行会社(そんなんあるんだ。うらやましい。)で働き、全米中を毎日飛び回るような“敏腕解雇宣告人”。「バックパックの中に入りきらない人生の持ち物は背負わない」というモットーを持つ彼が、ひょんなことからエリート新入社員の女性となんかホラいろいろあります。

リストラの話いうから、鬱映画だと身構えて観たんですが、そんなことなかったです。

むしろ、リストラ請負人というのはあくまで物語の構成要素に過ぎず、全体的には“マイレージためるのが趣味の出張大好き男による『俺の空』”みたいな感じで、なんというかジョージ・クルーニーが飄々としてるのが救いというか、彼の名を聞くといまだに「ああ、『サウスパーク』でゲイの犬の声やってた人か」って思います。

というか、自分のリアル仕事が半分ぐらいリストラ実行人みたいになってるのを思い出してやや鬱。

中間管理職の何が一番厭かって、必然的にリストラ実行人も兼務することになるということ。通常の実務面が人一倍多くある上で、さらに部下の指導やチームのマネジメントなどの管理業務があり、その延長戦上で避けて通れない部分にあるのが、この“解雇”に関するお仕事。または、その方向に持っていくお仕事。

世の中には、そういうの好きな人もいるみたいですけど、正直理解はできないです。

勿論、最初から“解雇”なんて目的な筈はないんですよ。ただ、そもそも“仕事をする気が全くない人間”、“フリーライダー気質の人間”に対し、「上長の指示に基づいた業務執行が何故できないのか?」という部分を詰めていくと、“本人自覚の上での就業規則違反”という形にならざるを得なくなってしまうだけなのです。

本人は本人で仕事はしたくない、でも会社は自分を守るべき。と根拠なく思ってるので、どうしようもない。

「そんな人間、とっととクビにしちまえよw」という人は多いかもしれないけど、そー簡単にクビにはできないし、するにしたって膨大な量の“根拠”を記録に残して提出しなきゃならないし、本人とは会社の要請に従った面談を幾度も繰り返さなければならない。そんなめんどくさい業務を、実務とは別にやらなければならない。

結果的に、多くの場合は上長の徒労の中で、フリーライダーは延々と生き残ることになります。

こうしたケースが長年繰り返されてきたのか、社内ではほぼ一定の割合でフリーライダーは増え続け、その分新規の雇用は見込めなくなります。新卒は超々氷河期というけれど、その原因の一端として、企業がフリーライダーを抱えすぎて新卒を採用る余裕もコストも裂けなくなっているというのはある種の事実だと思います。

それにしたって、自分でリストラを請け負うのは厭ですよ。この映画でもあったけど、ある種殺人です。

相手がフリーライダーであったって、別に個人的な恨みがあるわけでもない。ただ、明らかに次の職業に就くことが壊滅的に難しいと思われるような厄介な人材を、会社からおっぽり出すというのは、決して夢見のいい話じゃない。偽善者と言われ様が、兎に角自分の手を汚したくないというのが本音ですよ。

だからこそ、アメリカにはその誰もやりたがらない仕事を金でやる、解雇請負人がいるんでしょうね。

残念ながら、日本にはまだそういう代行会社はないみたいですけど。仕方なく、会社の中で最もそういうことをやらせやすそうな奴を、そういう問題児のいるチームの上につけて、実行させるというのが日本企業のやり方なんですよね。で、たぶん、そのやらせやすそうな奴っていうのが、まさに自分とかなわけです。

ただ、自分はこの映画の主人公ではないですが、その思うところは非常によく理解できました。

「おそらく、一番人を傷つけないで辞めさせられるのは、自分なのではないか。」と。この物語の主人公は、ただのマイレージ馬鹿というわけではなく、ソレを知った上で、自分だからできることと自信を持った上で、この仕事にあたっているのではないかと。誰かが指摘していた部分について、共感することができました。

いや、自分はそんな自信なんかないけど。ただ、他の人がやるよりマシかなーぐらいだけど。

あーでも、本作の“ネットでクビ切りシステムでコスト削減!”って部分ですが、そもそもそれで解雇通告みたいな難しいことできんだったら、もっと簡単な実務部分こそ全部家からネットでやれるようにしようよ。それこそ、通勤のコストも機材も土地のコストも減らせるじゃん。できるよ、ねーそーしよーよ。ねー。