てすかとりぽか

最近はポケモンのことを書く場所です。

『ボーダーブレイク エアバースト』 初心者は黙ってブロッケン.Jr

対人対戦(PvP)ゲームの新規ユーザー獲得に必要な“初心者向けのセオリー”に関するお話。

ボーダーブレイク エアバースト

セガが開発・運営するアーケード用サードパーソン・シューティングゲーム(TPS)。通称『ボダブレ』。

前々から興味あったのですが、偶々近所のスーパーのゲームコーナーに設置されたので遊んでみました。本作が他の対人対戦型のFPS・TPSと違うのは、プレイヤーが“ロボットに乗って戦う”ということ。この“ロボットに乗って戦う”という設定が意外と曲者だったりするのですよ。初めてプレイする初心者にとっては。

とりあえず、初心者にとって対人対戦ゲームにおける一番の参入障壁は“勝てない”ということ。

普通のゲームであれば、少なくとも操作方法さえ覚えさせてくれれば、1面や2面はクリアして楽しむことができます。でも対人対戦ゲームは、操作方法を覚えただけでは“勝てない”。1人も敵を倒せず、ひたすら相手に倒されまくるだけのゲームとなります。『スーパーマリオ』でいうなら最初のクリボーに殺されまくるゲーム。

そりゃそうですよ。そのクリボーの中には、“自分より経験がある人”が入ってるわけですから。

しかも、厳密にはクリボーじゃなく自分と同じマリオで。もしくは高性能なファイヤーマリオだったりする。勝てるわけない。稀にビギナーズラックで踏み勝てたりすることもあるけど、基本的には相手に殺されまくる。そんな『マリオブラザーズ』の対戦プレイがデフォみたいな『スーパーマリオ』は誰もプレイしません。

そこで、必要になってくるのが“初心者向けのセオリー”ということになります。

要するに“初心者はこれだけやってればなんとかなる!”という攻略法のようなもの。習熟度に拠らずビギナーズラックを最大限に引き出す立ち回り方法こそが、対人対戦ゲームの初心者が知るべき情報となります。また、それこそが、対人対戦ゲームで新規ユーザーを獲得するための“鍵”になると自分は考えています。

具体的には、ファミコン版『キン肉マン』で“初心者はブロッケン.Jr”がコレに当たります。

Call of Duty:Black Ops』における“腰だめでいいから出会い頭にサブマシンガンぶっ放せ!”です。自分もコレを知ってようやくキル数を稼げるようになりました。逆に、コレを知らないと、FPSのプロの人たちのキル数に貢献するだけのクソゲーになってしまいます。「それじゃエイムがうまくならない」だ?知るか。

“上手くなること”と“楽しむこと”は別。とりあえず楽しめないゲームなんか上手くなってどうすんだい。

兎に角、“勝てないことには楽しくない”のはどんなゲームも一緒。そのために、“まず勝つこと”はとても重要。そのためには“初心者のセオリー”が必要なのだけれど、ソレをどれだけ早くプレイヤーが学習できるか?学習できるようなゲームを作るか?という部分は、新規ユーザー獲得という目的上非常に重要と考えます。

前置きが長くなりましたが、『ボダブレ』はその点非常に優れたゲームといえます。

何より、“ロボットだから死ににくい”という点。プレイヤーが人間のゲームの場合、頭か胴体に銃弾を受けたら当たり前に即死します。この場合、“エイムの上手さ”が絶対的な要素となるため、初心者が熟練者に勝とうものなら“出会い頭のビギナーズラック”に賭けるしかない。それでも経験の差でほとんど負けるけど。

これがロボット同士の戦いだと、いい感じにアバウトになってしまう。少なくとも、即死はしない。

それでも、近寄りすぎれば熟練者の回避力と即死剣の餌食になるし、離れすぎるとそもそも攻撃できないので、うまいこと距離をとりつつロケットなんかで戦うようになる。そんな“なんとなく初心者が行き着く及び腰”こそ、このゲームにおける“初心者向けのセオリー”。なんとなくこれで勝てるようになったりします。

つまり、“初心者向けのセオリー”を自分で学習できるまでの時間が、異様なまでに短い。

普通の対人間のゲームで、遠中間距離なんて熟練者のエイミングのいいカモですから、初心者はとにかく寄らないといけないんだけど、そんな勇気は普通ない。初心者がソコに自分で気づくには、長い研鑽と死体の山が必要。誰かにソレを教わらない限りは、たどり着く前にプレイを辞めてしまうことの方が多いことでしょう。

対ロボットの『ボダブレ』は、ソレを小一時間余りのプレイで気づけるようにできてます。たぶん。

考えてみりゃ、そりゃそうです。家で遊べるFPSが隆盛な中、わざわざゲーセンに行き、カードを買い、安くないお金を払って遊ぶゲームって時点で既に参入障壁が高いのに、そこからさらに“死に覚えの道”が待っていたらたまったもんじゃないですもの。その分、“誰でもすぐにゲームを楽しめる”ようにしないといけないわけです。

だから、“初心者でもすぐに勝てるようにする”という部分は確実に考えていると思うんです。

しかも、それでもちゃんと“自分の力で勝った”と思えるようになっている。なぜなら、“初心者向けのセオリー”だけでは、結局のところ大負けはしなくても大勝ちはできないから。上を目指すのであれば、ちゃんとエイム技術や他のセオリーを学ばなければならないようになっているから。絶妙なバランスで。

戦争やスポーツほど実力ばかりの世界でなく、ギャンブルほど運要素ばかりでもない。

対人対戦ゲームとして最上のバランスを持ったゲーム。それが『ボダブレ』が“高額なアーケードゲーム”という敷居の高さにも関わらず、多くのユーザーを惹きつけている理由かなと、本日プレイして思い至った結論です。以前触れた“『ボダブレ』はチートも個々人の回線差もないから”って話にも繋がりますね。

“『ボーダーブレイク Ver1.5』 王族の賭場”

じゃあ、みんな“絶妙なバランスの対人対戦ゲーム”を作ればいいじゃない?ってのは簡単じゃないです。本作だって数々の名作対戦ゲームを作り上げてきたセガだからこそできたようなわけで。でも、“ゲームをちゃんと作ることで、お金を稼げるようにする”って思想は近年失われつつあるので大事にしたい考え方ですよ。

「そんなことより、なんとかロワイヤルにした方が簡単に儲かるじゃない」と。

自分は幸運にも(不運にも?)ソーシャル的な方向はまだ求められていない所にいるので、『ボダブレ』は趣味半分の勉強半分でやらせていただこうと思っています。『ボダブレ』の“新規ユーザー獲得策”は分かっても、“長期に渡って多くのユーザーを維持している”という謎の部分はまだぜんぜんよくわかんないので。

あと、『ボダブレ』やってる人みんなやさしい。

Twiiterで「これどうやんの?」的なことをつぶやいてたら、親切に教えてくれた方が何人もいました。これが他の対人対戦ゲームだと開口一番「ググレカス」って言われるし、「エイムが上手くならないから…」とか言いつつ、自分がカモにしやすいようなインチキセオリーを教えてきたりするしな。ほんとみんなやさしい。