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『ダークナイト ライジング』 俺、必要悪ですよ?(ネタバレあり)

えいが

ダークナイト ライジング

2012年公開のアメリカ・イギリス共同製作映画。クリストファー・ノーラン監督作品。

あらすじはもう他の方が書いてくれてると思うのでいきなり感想です。なんていうか、面白いとか面白くないとか以前に、面白すぎて困るレベルです。来週自分会社でずっとバットマンのこと考えてニヤニヤしてなきゃいけないんすよ。バットマンの秘密兵器のバットホニャララ(ネタバレ防止)のこと思い出し笑いするのです。

個人的には、ノーランのバットマン三部作最高傑作!!って言っても差しつかえないほどです。

公開初日から結構批判的な意見をツイッター上で散見していたので不安はあったんですけど。「つっこみどころ大杉」とか「話がマンガっぽすぎる」とかね。確かに『ダークナイト』に比べるとソッチベクトルに寄った要素が多いとは思いましたが、他作品も荒唐無稽でマンガ的な話には変わりないんじゃ…というか。

そんなマンガ的な物語を、本物の車や群衆やスタジアムを使ってリアリズム全開重視で撮った映像ってだけで面白く感じないわけないじゃんすか。つっこみどころ満載でいいじゃんすか。元はマンガなんですから。最初の実写TVシリーズ劇場版なんて「バット手裏剣」とか「バット鮫よけスプレー」とかいうアレさなんですから。

で、本作は前作『ダークナイト』を「個人的には凌ぐと思っている」ほどのディザスターシーンや戦闘シーンが拝観させていただけるわけですので、細かいこと言わずに楽しめます。でも、その上でなお細かいとこが素晴らしい作品でもありますので、以下ネタバレ注意となりますが書かせていただきます。


(以下バリバリネタバレしてるのでご注意ください。)


まず、本作が素晴らしい理由として、“アメリカ映画の新しい仮想敵”としてこれほど煽動的なものを扱った試しがないという点。(他にあるかもしんないすけど。)過去、アメリカ映画の“仮想敵の歴史”をなぞると、ナチスドイツに始まり、冷戦時代のソビエトイラク戦争以後のテロリストとそんな流れがありました。

ダークナイト』のジョーカーも、テロリストの枠に納まらない新しい“敵役(ヴィラン)”でした。

本作には明確な敵役として“ベイン”という筋肉ダルマがいますが、この人あまりに小物臭くて(それも本作が酷評される理由になってるみたいですけど。)真のラスボスにはとても見えない。まぁ、実際ラスボスは別にいたわけですけど。でも、彼がいう“必要悪”こそが、“新しいアメリカの敵”を生み出すわけです。

アメリカの新しい敵、新しい悪、それは“民衆の憎悪”です。

2011年にアメリカ合衆国ニューヨークのウォール街において発生した、アメリカ経済界・政界に対する一連の抗議運動は、その社会秩序に大きな衝撃を与えました。「We are the 99%」つまり、国の上位1%の富裕層が所有する資産が増加し続けている状況に対し、“民衆の憎悪”が露となった結果です。

もっとわかりやすく言うと「リア充爆発しろ!」ってことなんですけど。

ベインはこうした民衆心理、具体的にはゴッサムシティにおける貧富格差や“警察によるデント事件の嘘”に対する体制への不信感、さらには中性子爆弾による恐怖までもを巧みに利用して、民衆を“秩序に対する敵”つまりは“アメリカの体制に対する敵”に仕立て上げました。

それを煽動するベインが「俺は必要悪だ!」って言っちゃうところがまた小物臭くていいんですね。

自己都合で退職しその後半年間のプー経験を売りに在籍時以上の待遇を求めて復帰を希望してきたゆとり君”における「俺、必要悪ですよ?」に匹敵するほどの小物感です。でも、こういう“リアルに政治的な悪役”は小物じゃなきゃ駄目ですね。変に格好良くして、真似する奴が出てきたら困りますからね。

ただ、この“反体制的必要悪”に関しては、日本人も全く他人事じゃないんですよね。

わかりやすい最近の例を上げるなら、“大津のいじめの件”なんてまさにコレ。警察や学校という“体制への不信感”や“義侠心”が生んだ、“加害者情報の特定と頒布”に至っては、まさにベインの言う“必要悪”が生み出した悪であります。「いや、あれは必要だろ!」って声もあるかもですが、だから“必要悪”なんです。

もっとセンシティブな例を挙げるなら、“原発問題”なんかもそうでしょう。

ソレはあえてどっちが悪とか正義とか言及は避けますが。“どっちに転んでも誰かが被害を被る、それでも必要だから声をあげなければならない”という状況を見れば「いかに日本人が今、判断を問われているのか?」、ベインの言う“改革”が必要なのかどうか?が真に迫った話なのか理解いただけるかと思います。

そしてオチとしては、「実は片思い相手の私怨のお手伝いが目的だった」という、ベインまじ小物!!
(ここ、改革が目的と観るか、私怨のお手伝いが目的と観るかで、評価別れると思います。)

ベインが母校(母穴?)で残した武勇伝なんかも、「え?俺があの穴よじ登ったって?命綱なしで!?むーりむり無茶言うなよ俺そんなことやってないってw」って感じであっさり否定されちゃったし。今まで尊敬してた部活のOBが実は在学中は補欠だったみたいな事実を晒しちゃうところもほんと小物。

ベインが師匠に破門された理由すら「なんかお前見てると昔の辛いこと思い出すから。」て。

この「ベインまじ小物!ジョーカーの爪垢煎じて飲みやがれッ!」ってのが、本作が『ダークナイト』と比較酷評されてしまう理由になっているようなので、それを擁護する意味でも「ベインが小物なのは意図的なんじゃ?なぜなら割とリアルにやばい敵を呼び覚ましちゃってるし。」というのが自身の見解です。

リアルで「リア充爆発しろッ!!」って人はほんと多い(自分含めて)すからまじベイン小物でいいです。

まとめると、過去仮想敵としてきたナチスドイツやソビエトに続きテロリストもその新鮮味を失い、一昨年あたりから“妙に戦力差が拮抗した宇宙人”とばかり戦ってきたアメリカ映画において、その新たなる仮想敵を“自分たちにも最も近い場所”に見出し、見事に描ききった点が、本作何よりの素晴らしさと感じます。

勿論、そういう「イデオロギー含む善悪の描き方自体が嫌い」という人がいるのは理解できますけどね。

あと『インセプション』のアーサーが刑事役ででてきて、これたメインキャストなんだかモブなんだかわからない小物感を漂わせていたのでなんだろーと思ってたら、いやまさかの。おっさんその年で半ズボンはくのかよ。次回作『ダークナイト&ロビン』期待しちゃいますよ!!

そういや、バットマンに一言も触れてなかったので。バットマン格好良かったでした。