てすかとりぽか

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『脳男』 莫大な遺産受け継いでる奴多すぎ

脳男

2013年の日本映画。瀧本智行監督作品。

首藤瓜於原作小説の映画化ということで、原作は未読でしたがなんとなく気になってた作品です。公開当初から評判が賛否分かれていたので、なーんかパッとしないサイコスリラーなんかなーと思ってたら、全然予想のナナメ上を行く和製ダークヒーローものと言いますか、バカ映画で楽しめました。

観賞前にTwitterで“日曜洋画劇場レベルの作品”と評されている方がいらっしゃって、正直どういう意味なのかなあと思っていたのですが、“日曜洋画劇場でやる『コマンドー』レベルで、みんなで総ツッコミしながら観るのにぴったりの映画”という意味で、ある種最大の賛辞であるということと納得しております。

以下、ネタバレ含みつつの感想となります。

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脳男こと主人公?の鈴木一郎くんは、生まれつき感情が欠落しており、でも記憶力抜群でイケメンでカラテも得意という、一見SNKの格闘ゲームによくいるタイプのキャラですが。裕福な家の出身ということもありその莫大な遺産を受け継いで“自らの意志で悪と闘う”どっかで聞いたようなダークヒーローなのです。

なんでそうなったのかは話のキモなので、劇場でご覧ください。説明が面倒なんじゃないですよ。

そんな彼を付け狙うのは、本作のヴィランにあたる緑川。彼女もまた頭脳明晰で爆破技術に通じ、両親から莫大な遺産を受け継いでいるという点で、自分と一郎くんは同じだとかなんか言ってます。ああ、なんかよく血を吐くあたりもSNKの格闘ゲームによくいるタイプとして共通点ですね。

今後も、頭脳明晰で炎を操りかつ両親から莫大な遺産を受け継いでいる奴や、頭脳明晰で呪われた血によりたまに暴走するが両親から莫大な遺産を受け継いでいる奴など、個性的なキャラクターたちが繰り広げる超能力バトルが繰り広げられて行くわけですね。え?貧乏人は麦でも食べてなさい。

いやでも、こんなド直球に中二病なヒーローものを日本でやってくれるだけで凄いことですよ。よくよく考えると一郎くん大したことしてないじゃんとか、ハンドガン(ニューナンブ式)で遠距離狙撃成功させる警官が最強とか、ツッコミどころ満載なのは、狙ってやってのことだし目くじら立てることじゃないと思いますよ。

松雪泰子のやってる監察医が、どう見ても欲求不満おばちゃんにしか見えないとかも言い過ぎですよ。

ただ、ポリグラフ検査のことはよくは知らないけど、相手の意表を突く質問をするという意図で、なんで「私とセックスしたいですか?」が出てくるんですかね。実際思惑どおりの反応はとれたので良かったわけですけど。そこをちゃんと指摘してくれた緑川が一番本作の中でマトモなキャラに見えました。

あとラストの台詞は、割と賛否が分かれるポイントみたいですね。個人的には“希望を示している”のではなく“絶望を示している”と感じたので、一郎くんの底の知れなさと殺人者としての成長を表しててゾクッとして好かったのですが。“希望を示している”と感じちゃうと、一郎くん底が浅い奴みたいでヤじゃないですか。

ラストシーンの台詞は、鷲谷が一郎くんに対して、「なぜ能動的に動いたのか?」を確認しているのと同時に「なぜ殺したのか?」も問うたことへの返答です。その回答が、鷲谷への“感謝”であったとすれば、鷲谷にとっては“志村の再犯”と併せて“二重の絶望”を味わうことになったわけですよね。

まるで、『ハンニバル』シリーズにおいて、クラリスを辱めた相手をいつも“面白い方法で”殺害してくれるハンニバル・レクターの凶暴性を彷彿とさせるラストで、個人的には素晴らしいオチのつけ方だと思うんですけどね。『ダークナイト』よりかはそっちに近い作品かなと感じました。