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『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! FILE-04 真相!トイレの花子さん』 和製コズミックホラーとして

戦慄怪奇ファイル コワすぎ! FILE-04 真相!トイレの花子さん

2012年の白石晃士監督作品。

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全国各地にある有名な都市伝説の真相を主観で追うホラー第4弾。『ノロイ』や『オカルト』などのジャパニーズホラー系モキュメンタリー(フェイクドキュメンタリー)で有名な白石監督か、新たな境地を求めて凄まじくやらかしてくれている本シリーズの中でも、頭一つ抜けてやらかしている作品です。

ぶっちゃけ、本シリーズは『ほんとにあった!呪いのビデオ』シリーズのパロディです。

そもそも、『ほんとにあった!呪いのビデオ』シリーズって何?ってとこからだと思いますけど。よくTSUTAYAなんかに行くとコーナーもある“一般投稿により寄せられた戦慄の映像集”と題された人気シリーズで。Youtubeに上がる和製心霊動画関連はほぼこのシリーズ発といってもいいぐらいのヤツです。

「おわかりいただけただろうか…?」でおなじみのフレーズもこのシリーズ発ですね。

この『ほん呪』自体が、また心霊動画以上に(心霊動画に当りがあるのは100本に1本程度ですけど。)出てくるスタッフや、投稿者そのものの“キチ○イっぷり”を楽しむ内容となっておりまして。フェイクなのはわかってるのに、時折“これはガチじゃないのか!?”と思えるような方もいらっしゃったりしてね。

そんな雰囲気そのままに、面白可笑しくパロディとしてまとめたのが本作というわけですね。

だもんで、おそらく最初から“わかってる人”向けにしか創ってないんでしょう。むしろ、シリーズ4作目まで付いてきちゃったってことは当然わかってるんだろうよ?ということで、最初から飛ばしに飛ばします。トイレの花子さんなんか、まぁ予告編に出てるとおり、大便器からザバーッって飛び出して来ます。

そして、唐突に夜になったり昼になったりタイムリープしたりするトンデモ展開…。

名作『死霊の盆踊り』にも、急に夜になったり昼になったりするシーンがありますが、たぶんアレへのオマージュなのではないかな?と。アレの方は単に“編集上のミス”と言われてますが、本作はドキュメンタリーの撮影中かつカットシーンなしで昼夜が入れ替わるという離れ技をやってのけてるのが本当に凄い。

ただ、“一般的に言う糞みたいな演出”なので、さらに着いて来れるファンを限定して行きます。

しかも、そのタイムリープ展開が、またちゃんと伏線回収して「辻褄をあわせたぞ!」的なドヤ的な感じに落ち着くのでムカつきますね。さらにそこに女子高生同志の友情も絡ませてきてちょっとウルッと来るあたりが「シュタインズゲートかよこのやろう!」となりますが、その直後に大逆転のゴアシーンという素晴らしいオチ。

でも、一番の見どころは、ディレクター&パワハラ&暴力担当の主人公?の工藤。

シリーズを通して、猪突猛進型で、自己中心的で、暴力的で、姑息で、卑怯で、不敬で、人間として最低だけど、案外こういう人がいないと仕事が前に進まなかったりもするような人物像の典型的な工藤。そんな彼の、誰よりも人間らしい人間像を見事に描ききっている、白石監督の手腕は本当に素晴らしい。

さらに、本作ではADの市川(女性)にも注目。ついに彼女もキレる。

ADの女性がいつも汚れ仕事を押し付けられて、酷い目に遭うというのは『ほん呪』シリーズから続くB級ホラードキュメンタリーの伝統みたいなものですが、心霊映像ではなく彼女のキレ方を持って「コワすぎ」のタイトルに適わせてしまうあたりも白石監督の意地悪さがわかります。

正直、心霊映像なんかおまけです。観るべきは人間模様。花子さんの安っぽさ見ればわかりますよね。

また、本作は心霊モノというよりは、もっと大きな宇宙的概念を内風したクトゥルー神話大系にあたるような“コズミックホラー”であると言えます。H・P・ラヴクラフトたちが描く暗黒邪神の世界に、花子さんや河童や口裂け女まで取り込ませてしまった、そんなところに白石監督の狙いはあったのではないのでしょうか。

過去作『ノロイ』、『オカルト』、『シロメ』にも、暗黒神話大系に通じるところは強くありましたからね。

這いよれ!ニャル子さん』とかのおかげで昨今日本にもクトゥルーブームは来たのですが、上澄みの単語や台詞が流行るレベルで、肝心のコズミックホラーが流行ってるとは全然言えない状態でしたが、白石監督のような正統派フォロワー作家が国内にもいてくれるというだけで、本当にありがたいことですねえ。