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泥船てすかとりぽか

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『ジャッジ・ドレッド』 実在する非実在私刑執行人

えいが

ジャッジ・ドレッド

2012年のイギリス映画。1995年同名作品のリメイク。ピート・トラヴィス監督作品。

大事なことなので最初に言っておきます。ジャッジ・ドレッドは実在しません。

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国土の大半が荒廃した近未来。巨大都市メガシティー・ワンは、日の犯罪件数が1万を超えるほどの犯罪多発都市でもある。この都市の治安を維持しているのは、警察と司法の機能を併せ持つ裁判所であり、そこに所属する通称"ジャッジ"と呼ばれる裁判官達である。彼らは法を犯した者には決して容赦をしない。

SFです。フィクションなんです。もう一度言います。ジャッジ・ドレッドは実在の話ではありません。

何の話かわからないかもしれませんが、本作に登場するタワー型マンション。こういうタワマンの吹き抜けとか見ると、人を投げ落としたくなるのが人の本能です(「タワマン 投げ落とす」での検索結果:約 183,000 件)。勿論、本作でも投げ落としてますし、『ザ・レイド』でも投げ落としてました。

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でも、現実に投げ落としたら、それは犯罪です。殺人罪か未遂罪に問われます。

故にどんなにムラムラッと来てもやっちゃいけません。「映画の真似をした」なんで口が裂けても言っちゃだめです。それこそ青少年なんとか育成条例に準じ、「非実在私刑執行人描写を理由にした犯罪がうんたら」とか言われ、映画作品が表現規制の対象として上映禁止などの措置を受けかねない事態に陥ります。

“非実在私刑執行人”とは。

創作された文字・視覚・音声情報で“私刑執行人”と認識される創作上の架空のキャラクターを意味する法制上の専門用語です。さらに、以下のように青少年保護ホニャララ条例にて定義され、一般流通される商品に下記のような描写が見られる場合は、不健全指定図書類として指定できるそうな。

“服装、所持品、背景その他の人物像を想起させる事項の表示又は音声による描写から私刑の執行人として表現されていると認識されるもの(以下、非実在私刑執行人)が登場する又は非実在私刑執行人による刑罰執行類似行為に係る非実在私刑執行人の姿態を視覚により認識することができる方法を肯定的に描写することにより、青少年の暴力に関する健全な判断能力の形成を阻害し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの。”

なんでも、『水戸黄門』や『必殺仕事人』なんかも、この対象にあてはめ規制しようとしてるとか。

という冗談はさておき、性的描写のある漫画やアニメと性犯罪との間に因果関係が証明できないのと同時に、私刑やリンチという暴力的描写のある映画と暴力犯罪の間もしかりというのは揺るぎないとは思っていたのですが、近日そうでもない事態を目にしてしまっているため、一応ご紹介しておきたいなと。

特定個人・某社によるtogetter改編と-お詫び-に対する抗議” こちらは2chTwitterでは有名な匿名の方が主導されている、change.orgというSNSを利用した署名活動です。表向きは署名活動に見せつつ、実質気に入らない個人に対してスパムメールを送りつけられるという、“私刑システム”として極めて洗練されたものであります。

もちろん、本来のchange.orgというサービスは、“私刑利用”を目的としたものではありません。

「社会を変えるためのキャンペーンに参加しやり遂げるためにすべての人に権利を与え、どこからでも始められるようにする。」ことや、「月1000件もの各問題において100万もの人々がchange.orgで署名することで地域的に世界的に変えるために毎日キャンペーンをやり遂げる。」ことを目的としている、健全なSNSです。

要は使う者次第というものではありますが、実質特定個人宛てに大量のスパムメールが送ることができる“私刑システム”としても有効であることが今回証明されました。また、「そんなの送られるようなことやる奴が悪いんだろう!」という声が大きいという事実も、このサービスをとりまく環境として興味深いところです。

自分も今回のケースに関して、送られる方にも問題はあると感じています。

では、“送る側に問題はあるのか?”その点を問いただされた方がTwitterで極めて面白い答えをされていたので、それが今日の本題でもあります。気に入らない相手にスパムメールを送りつける行為、Twiiter上から集団で特定個人を攻撃する行為、いわゆる“私刑”を指摘された方の弁解がこちらになります。

「じゃあ、水戸黄門や必殺仕事人にも文句つけるのかよ?」

彼は“非実在私刑執行人”を現実問題に引っ張り出してしまいました。現実そこで起きている“私刑”に関して指摘された際に、「非実在私刑執行人描写を理由に」自己弁護を計ってしまったわけです。現実世界の性犯罪者が「じゃあ、エロマンガにも文句つけるのかよ?」と言うようなロジックを用いたわけです。

これは危険です。“非実在私刑執行人描写と並べて、現実でも私刑を行う人”がいることは、極めて危険です。

個人的にはフィクション世界の暴力描写は大好きですが、どんな理由があれ現実の暴力は許せません。同様に現実世界の私刑も許せません。どんなにやられる側が悪人であれ。でも、「悪い奴はリンチするしかねーだろ?」って人たちは、フィクションも現実も同様に考え、軽々しく一線を越えていきます。

大事なことなので3回目言います。ジャッジ・ドレッドは実在しません。

フィクションと現実の区別がつかなくなった人たちに理解を求めようとして、それは適わないと知ったのはここ最近のことではないので、別にもう彼らに理解は求めません。ただ、今彼らのような人の足元をすくって、それを根拠に表現規制やらを押し進めようとしている人達がいることはみんな知っておいた方がいいです。

ぼくらが夢中になっている、フィクションの世界を守りたいのであれば。

フィクションの非実在を、現実として受け入れましょう。