てすかとりぽか

最近はポケモンのことを書く場所です。

『無垢な老女と無慈悲な少女の信じられない物語』

無垢な老女と無慈悲な少女の信じられない物語』美術展

五反田の原美術館でやってるやなぎみわさんの展覧会。

知り合いについていっただけなので、
やなぎみわさんがどんなひとなのかはあまり知りません。
というのは嘘でぜんぜん知りません。

でもグリム童話とか「寓話」 をモチーフにした作品はよかったです。

「シンデレラ」が金梃子で足の指をもがれる絵とか。
でも本当は足をもがれるのはお姉ちゃんのほうなんだよね。

そもそもシンデレラに於ける「靴が片足脱げる」というのは東欧に残る民話の原型では、「元々片足である」ことを意味しています。また「灰かぶり(シンデレラ)」は竈の近くにいるということ、即ち竈神であることを表します。片足の竈神が動物や精霊と交わり富を成す、これは旧石器時代から全地球的に点在するフォークロア=伝承のひとつで、各地のシャーマニズム庚申信仰等とも結びついています。

あと写真と映像の作品「砂女」もよかったです。
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老女が孫に寝床で語る昔話。
老女は少女だった頃、荒野で砂女に出会った。
頭からすっぽりと黒いテント状のソレを被った砂女。
少女の足に老女の手を持ち、生と死を永遠に旅する砂女。
彼女は砂女の前で言い伝えどおりの呪文を唱える。
大地の母の母、‥(忘れた)の母の母、創造の母の母、破壊の母の母。
そして、砂女の中に入り、果てしない落下の感覚を味わう。
目を覚ましたら砂女の抜け殻だけが残った。
海の匂いがした。

そんなお話。しゃべってる言葉からしてメキシコなお話でした。
これはなんなんだろう。いったいなんのお話なんだろう。
なんらかの口碑伝承をモチーフにはしていそうだ。

メキシコ。黒いテント。生と死。四つの概念の母。

砂女は中米の先住民族に伝わる神格オメテオトル(またはトナカテクトリ)ではないかと仮定してみる。オメテオトルは「オメヨカン(Omeyocan)=2つのものの場所」と呼ばれる、あらゆる二元性と対立概念(光と闇、動と静、秩序と混沌、生と死)を表す世界に住む。また天界から女性の胎内に魂を落として、人間の生命を生み出し、さらにアステカの主神トラトラウキ・テスカトリポカ、破壊神ヤヤウキ・テスカトリポカ、創造神ケツァルコアトル、太陽神ウィツィロポチトリという四つの神格をも産み落としました。

更にオメテオトルは顎の弛んだ老人の姿で描かれることが多い。
作者は顎が緩んだ老人を、黒いテント状のソレに「見立て」た。
キタコレ。間違いない。

ええ、芸術的鑑賞眼とかそういうのは持ち合わせてないです。
なにごとにも民俗学的鑑賞眼しか。