てすかとりぽか

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『生ける屍の死』 オスカーと言う病

"第81回アカデミー賞特集"

アカデミー賞ってなんだかどうも好きじゃないのです。

主に一部のユダヤシオニストの独断と偏見で選ばれてるって事情は別にしても(ユダヤ人のことは嫌いじゃないです。むしろ好きです。)なんでもない映像をなんとなく繋げただけのなんだかよくわかんないような作品をみつけては、ほうこれはなんだかよくわからないけどいいねそーだねいいよねーぼくらもう普通の作品は見飽きちゃっててさーこういうそのえーとなんていうのそのよさげな感じなのがいいよねー的な感じで選ばれてるような気がする、いや選ばれてるのがなんか厭。

勿論、全てのアカデミー賞受賞作品がそうなんじゃないんですけど、ちゃんと面白い作品もたくさんあるので賞の意義も当然認めているところはあるんですけれども、一部どう観ても「うまく言えないけどなんとなくよさげな感じで選んだ」みたいな作品が少なからず混ざってる、そのノイズが却って厭。

それでいて、その影響を受けた人がまた「さすがオスカー作品は格が違った」とか「見事な仕事だと関心はするがどこもおかしくはない」とか、これまた意味不明な言語で絶賛する。「誰もうまくいえない」ことが感性に訴える作品であることと曲解され、凡庸な作品をお祭り騒ぎ上げるのが厭。

「好きな映画はミニシアター系」、それが世界の答えなのが厭。

そういうアカデミー賞に関して負のイメージをもってる自分の方が異端で駄目で屑なのもよくわかってますけど。そして、そういう異端感とか反社会的な姿勢やマイノリティさ(最近覚えたかっこいい単語)に自己満足や多幸感を感じるのは中二病の症例だってのもよーくわかってますけれども。

何より、アカデミー賞のことをオスカーって言い換えた方がなんかかっこいぐねとか、ラズベリー賞をラズィー賞って言うと映画通っぽぐねとか、よぐわがんねげどもカンヌとかヴェネチア(ベネチアじゃなくてヴェネチア)とか多用するのも中二病の末期症状だってのもよく自覚しました。

そういうわけで、『おくりびと』が選ばれたのは素直にうれしいです。

皮肉にもというかなんというか、世界で最も宗教観というか死生観が希薄な国の葬儀業を描いた作品が、かの宗教大国アメリカで評価をいただくとは素直に興味深いことです。逆に考えると、そういう日本だからこそ、そういう部分をエンタメとして扱えたんだと思いますけど。

そう、アメリカって日本とは比べ物にならないくらい宗教的な国なんですね。よく「アメリカ合理主義」とか言われるから、どっちかっていうと科学万来なイメージありますけど。実際のところ、科学も信仰の一つって扱い(サイエントロジーのことじゃないよ)だし、個々人の宗教倫理も含めた合理主義があの国の感じなのです。

そもそもあの国を創った始祖たる人々こそ、聖書のアブラハム物語に自らをなぞらえる巡礼者の末裔であり、神の再臨を望む千年王国の夢を建国神話になぞらえたものたちなのです。大統領が聖書をアレするのはそのへんの宗教意識が所以なのです。日本の首相はそんなことしません。

みたいな話は、ちょうど読んでたこの本のうけうりですけど。

生ける屍の死

山口雅也著のミステリ小説。ただでさえ必要以上にミステリ面で丁寧なお仕事がされている本作なのですが、おまけに「死んだ人間が蘇る世界」における「葬儀屋の家族の物語」とかいうとんでもない切り口からして、尋常のミステリの枠にはとてもおさまりきらない感じです。

頭の悪いたとえをするなら、『シャーロックホームズ』+『ゾンビ』+『おくりびと』な感じです。

本当に頭が悪い。でも、それだけにこの本に収まった知識ステータスのとんがり方は異常。もうギッザギザです。アメリカ人の死生観から宗教観、埋葬に関する考え方から葬儀ビジネスでの儲け方、エンバーミング(死化粧)から火葬に関する技術まで、ソレ系の薀蓄をみつしり詰め込んでますが、それだけには留まりません。

さらに、「死んだ人間が生き返るということ」に関して極めて現実的な思索と、非常に納得の得やすい設定づけとその説明を行なっています。単なる「ゾンビもの」としてみただけでも、かつてここまでソンビのことを真面目に考えた物語はなかったんじゃないんでしょうか。

かつて「ゾンビになる原因は人工衛星の故障」って説明で納得してた自分が恥ずかしい。

いや、別にゾンビになる理由なんてゾンビパウダーでも宇宙からの怪光線でもネクロノミコンでもTウィルスでもステーシー現象でも石仮面でもなんでもいいんですけど。とにかく、そんなよくわかんない理由で死んだ人間が蘇るって不条理さが、もし明日起きたらどうする?っていう妙にリアルな怖さと、厭でも脳内シミュレーションしてしまう想像の楽しさに繋がってるんですよね。

Left 4 Dead』には、それがないんだよなぁ…。

ハァ?ソンビになる原因なんて知るかよ!他の映画でも観て来いよ!って姿勢がもう厭なんだなぁ…。説明書にも世界設定に関しては何にも触れてないし。それなのに、「主人公4人は誰もゾンビなんか恐れてはいない」的なことだけわざわざ書いてあるし…。ゾンビ怖いだろ普通!そんなやつらに感情移入できねえよ!

なんだ、結局また『Left 4 Dead』に関するグチですか。どんだけこのネタ引き摺る気ですか。とはいえ、期待してたんだよぉ…。死ぬほど怖い思いしたかったんだよぉ…。なんだよあのペタペタゾンビはぁ…。ペタペタペタペタ…何塗りつけてきてんだよぉ…。

「やつらに痒み汁を塗りつけられると、痒くて痒くて痒くて狂い死ぬ。小林多喜二みたいに。」
「あと全身の毛穴という毛穴から小さい白い蟲が出たり入ったりする。」
「あと膝のお皿の裏側にフジツボがびっしり生えてくる。」
コンタクトレンズごと角膜がとれちゃう。」
「耳の中の水が出ない。」

とか、説明書にちょこっと書くだけで、超一級のホラーゲームになるのに。勿体無い。