てすかとりぽか

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『呪怨 黒い少女』 加護の方

ホラー好きの友人から新しい『呪怨』が好いので観ろ観ろいわれたので観てみました。どうやら、最近劇場公開されたソレは2種類あるらしく、加護ちゃんが出てない方が面白いんだそうな。とりあえず、近所のTSUTAYAに行ったら片方しかなかったので、その方を借りて観てみました。

呪怨 黒い少女

2009年の日本映画。安里麻里監督。加護亜依主演。

加護亜依主演。つまり、加護ちゃんがでていない方じゃない方でした…。

うんでもまぁ、個人的には好きな感じの怖がらせ方なので好かったです。見た目じゃなくって、雰囲気とか、あえて見せない演出で怖がらせるあたりとか。個人的に、『呪怨』の「どうよ!吃驚したでしょ?怖いでしょ?」っていう押しつけがましい怖がらせ方ってどうにも好きになれなかったので尚更。

今回は伽椰子もとしお君も出てこない過去作とは完全に違うお話なのですが、生まれてくることができなかった子供の怨念(水子というよりはピノコ的な意味の)が呪いとなって、いろいろ酷い目に遭うお話です。ピノコ的な理由で生まれなかったわけなので、それで誰かを恨むのは筋違いな気もしますけど。

妥当な理由で恨まれるより、理不尽な理由で恨まれる方が怖いからいいんですけどね。

で、いつもどおり淡々と人が死に続けるわけですけど。今回はじめてその怨念に立ち向かうキャラが現れたりするのが新しい。なぜか、主人公の妹がそんな役回りで、最初はちょっとした霊能オネーチャンとして、悪霊に憑かれている少女の元を訪れるんですけど、その担当看護婦の加護ちゃんを見た瞬間に一変。

あー、こらあかんわ。あかん。でなおしてまた三日後にくるわー。って速攻帰宅。

それからが彼女の本領発揮。自宅の部屋中に真言密教系の霊符を張り巡らし、自宅の風呂で水垢離(みずごり)まで始めてしまう。要するに、本気で霊能バトルはじめる気まんまんですよこの人。『エクソシスト』っていうか、『霊幻道士』に近いですね、やってること的に。こういう唐突なB級映画的展開は大好きです。

そして、三日後。いよいよ除霊…もといエクソシズム開始。

霊媒の少女の病室に並べるは密教系の法具の数々。数珠を振りかざし、なにやら真言を唱え始める霊能ネーチャン。…ってよくよく聴いたら真言じゃなくって「般若心経」。それぐらい、中二病の中学生でも唱えられます。もしかして、この人もそういう「自称霊感少女」の類なのかもなー。法具とか霊符とか持ってるあたり。

そして、儀式の終了後に「九字」を切る動作が見られたんですが、数えてみたら9回じゃなくて10回切ってました。天台密教の「九字」は「臨兵闘者皆陣裂在前」を即ち9回の手刀で以って切る印法ですが、10回切るのは「十字」と言って、さらに一字多く切る強力な印法です。このへん妙に凝ってるあたりも邪気眼臭がします。

この「十字」が見られるのは、真言密教の中でもポピュラーな九字法である「不動金縛りの法」の中でも、疫病退散に用いられる刀印で、今回使われていた手法は最後に袈裟懸けに切るあたりからしてこれにそっくりです。ほんとは「種子字」という一文字を「鬼」と記し、それを切る感じにするのですが、だから何だって話です。

でも、そんな霊感少女気取りでも、なんとか除霊に成功。めでたしめでたし。

っていう展開でめでたく終わった霊映画はかつてないですよね。確実に除霊失敗どころか、悪霊強化フラグ踏んでますよ。実際、そのエセ霊感少女のところに悪霊がきちゃう羽目に。でも、絶対的に自分の霊能力に自信のある彼女は、除霊の失敗なんか認めたくありません。そこでとんでもない結論に思い至ります。

「あたしったら、間違って悪霊じゃなくて、本人を除霊しちゃったんだわ!!」

って…。この解釈の新しさにはびっくりです。いや、なんか『ヒーローズ』にも似たような話があったなーっていうか、昔『パーマン』で主人公が逆にコピーロボットにされて、タンスの中にしまわれちゃうってホラー回があってソレに似てる気がしないでもないですけど。「本人が除霊される」ってのは想像を絶する怖さだなあ。

そういうわけで、怨念なんかよりこの霊感オネーチャンのしでかしたことが一番怖い映画でした。