てすかとりぽか

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『K-20 怪人二十面相・伝』 個人的乱歩作品ランキング

K-20 怪人二十面相・伝

2008年の日本映画。佐藤嗣麻子監督作品。

公開当時凄い観たかった筈なのに、DVDになってるのをすっかり忘れてました。ずっと宅配レンタルばっかり続いた後、ふと久々にレンタルショップに行くと、見忘れてる作品をたくさん見つけます。んでも、結局返しに行くのが面倒なので、メモして帰って宅配レンタル予約をするんですが。そりゃ、レンタルショップもなくなっちゃうよな…。

んでも、観はじめたらなんか違和感が。これ、江戸川乱歩の『怪人二十面相』じゃないん?

調べてみたら、北村想という人が乱歩の影響を受けて書いた同名小説が元らしいのです。思うさま、乱歩のソレだと思ってたので、なんかすごいがっかりです。乱歩乱歩詐欺ですか?もう観なくていいですか?とか思いましたが、観たら存外に面白かったので好しとしましょう。乱歩作品とは全くの別物と思えば楽しめます。

そもそも乱歩作品は、自身の趣味嗜好に関する原初体験にあたるものなので、ちょっと意識してしまうのです。

自分は小学生の頃、休み時間もずっと図書室に引き籠って、『江戸川乱歩・少年探偵シリーズ』全46巻をよみふけっているような駄目ガキでした。読書という趣味習慣を持つようになったのは、まさに乱歩先生のせい…じゃなくて、おかげなんですよね。文章について「読み手を意識して書く」ようにになったのもまた同様に然りで。

クトゥルーや海外ホラー、筋肉少女帯に興味を持つようになったのも、正にその派生なわけです。

『少年探偵団シリーズ』を読み終えてしまうと、他の乱歩作品も読みたくなるわけですが、子供なので本を買うお金なんか持ってないわけで。誕生日とかクリスマスとか、特別に何かを買ってもらえる機会を見計らって、親に乱歩作品をねだってみたことはあるんですが、「なんでそんな本を読むんだ!」って怒られたのを覚えています。

そりゃそうですよ。親世代から見たら、カストリ誌に載ってるような変態官能小説家ですもん。

そいでもまぁ、中学生になってお小遣いも儘なるようになってから読んだ作品も多いですが、兎に角一番好きな小説家だった時期が長い作家です。未だに、復刻版がでると手に取ってしまいますもの。そんなわけで、映画観たせいもあってか乱歩熱が再燃してしまったので、個人的乱歩作品ランキングでもやってみましょうか。

ていうか、印象が強かった作品ランキングかな。読んだの昔すぎて覚えてないのもあるので。

1.『芋虫』

今年『キャタピラー』で映画化されますが、映像化可能な作品とは思ってないので期待してません。何の自主規制もなく映像化できるとは到底思えないですし。中学生ぐらいで読むと確実に2,3日は寝込むぐらいのトラウマ作品です。すぐ「ならば戦争だ!」とか言う馬鹿にはぜひ読んでほしい最高の反戦作品でもあります。

2.『地獄の道化師』

これを読んで完璧に乱歩にはまったような気がします。トリック、アリバイ工作、真犯人、動機、そして猟奇性。どれをとっても乱歩作品の中でもトップクラス。よくも、こんな作品をしれっと児童向けの『少年探偵団シリーズ』に入れておいたもんだよなーと。この作品の収録巻だけは、何度も読み返した覚えがあります。

3.『鏡地獄』

生まれて初めて読んだ「発狂オチ」の話。球面の裏側一面に鏡を張り付けて、その中に入ったらどうなるだろうかという、ほんのそれだけの話なんですけど。誰か本当に実験した人いないかなーとずっと思ってて。大人になって3DCGのソフトを入手した時、これで実験できる…と思ったけど、怖くてできなかったです。

4.『三角館の恐怖』

何故かこの収録巻だけ図書室になかったので、小遣いをためて買いました。買ったせいもあってか何度も何度も読んでましたが、後で思い返すと乱歩作品の中でも珠玉の本格ミステリだった気がします。ていうか、この影響を受けて、初めて自分で推理小説なるものを書いたりもした。今原稿が出てきたら瞬時に破り捨てるけど。

5.『怪人二十面相

兎に角、これを抜きに乱歩は語れない一冊。逆に、この回以後の二十面相は、どんどんまるで駄目なオッサン街道をまっしぐらなので。単なる、世間を騒がせて喜んでるだけの愉快犯、というか可哀そうな中年になっていくので。だから、『K-20』は本作の映画版だと思って本当に楽しみにしていたのですよもー。

6.『孤島の鬼』

おそらく、乱歩作品の中で世間一般の評価が一番高い作品。最高傑作として名高い作品がコレなんじゃないんでしょうか。同性愛、奇形趣味、SM、人形フェチ、のぞき、そして殺人と、乱歩ワールドの集大成ともいえる本作ですが、個人的にはソッチ方面の乱歩はそんなに好きでもないんですよね。

7.『夜光人間』

怪人二十面相劇場型犯罪がエスカレートし、完全にダメなおっさんに成り下がった作品がコレ。逆の意味でショックだったのでよく覚えてます。全身に夜光塗料を塗りたくり、夜の街に出ては通行人を驚かせ、黒の全身タイツを上から着こむことで消えたように見せかけるという…。『孤島の鬼』書いた人の作品なんだろうか…。

8.『心理試験』

『少年探偵団シリーズ』では、『地獄の道化師』と同巻に収録されていた短編。犯人視点から、心理テスト(嘘発見器)の攻略という極めて斬新な物語を描いた作品。ほんとよくこんな作品を児童向けにしたものだなと…。でも、おかげで嘘をつき通すためのコツを幼少にして知ることができたので、このとおり酷い大人に成長しましたよ。

9.『パノラマ島綺譚』

これも乱歩を代表する奇作で、初めて読んだ当時は好きだったんですけど。あまりに自称アングラ人間や自称サブカル人間に愛好され持て囃されるせいもあってか、素直に評価しにくい作品。これの漫画版を読んだだけでも、まぁとりあえず乱歩好きは自称できるので、入口としては便利っちゃ便利です。

10.『虫』

「虫、虫虫、虫虫虫、虫虫、虫虫虫、虫虫、虫虫、虫、虫虫、虫虫、虫、虫虫虫虫、虫虫、虫虫虫、虫虫、虫虫」
文字の羅列だけでグロ描写ってできるんだ。って思い知らされた画期的な作品。

うん。やっぱり色々思い出すのに苦労しました。
個人的ラヴクラフト作品ランキングの方がだいぶ楽そう。