てすかとりぽか

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『リング』 クトゥルー神話

今週、テレビ東京午後のロードショーで「夏だ!お盆だ!リング一挙放送!(うるおぼえ)」やってました。

リング

1998年の日本映画。中田秀夫監督。

リング2

1999年の日本映画。中田秀夫監督。

リング0 バースデイ

2000年の日本映画。鶴田法男監督。

なんだかんだいって、『リング』は個人的に“一番恐いホラー映画”の座を未だ譲りません。

劇場公開当時はあまり話題になっておらず、その時劇場で観てたのも自分ただ一人。「どうせ日本のホラー映画なんて…」って完全にナメ腐っていたところ、観終わった後はもう恐怖と絶望で茫然としてました。同時上映の『らせん』の内容は丸っきし覚えていないは、以後1週間はテレビのある部屋で寝れないなどの後遺症まで。

当時、一人暮らしのワンルームだったので、テレビのない部屋は無かったわけですけど。

そんな恐怖を是非友人たちにも共有させるべく、ビデオが出てからは一人暮らしの友人の家ばかりを夜中に訪ねては、部屋真っ暗にして鑑賞会を行ったものです。もちろん、ビデオ観終わったタイミングで、携帯からこっそりそいつの家の固定電話に電話したり、ちょうど7日後にも電話する“サプライズ”も忘れないようにして。

そんな『リング』ですが、ほんとに怖いのは一作目だけなんですね。

『リング2』では、いかにも怖がらせようとサウンドを「ズギュアァーァン!」と鳴らすシーンがあるんですが、肝心の映像があまりに前衛的すぎて「へ?」で終わってしまう。ストーリーもある種前衛的過ぎるし。『リング0』に至っては、おそらくホラーとして作ってないです。もう、なんていうか、怖いくらいに怖くないのです。

ただ、ホラーとしての怖さを求めずに、“クトゥルー神話もの”としてなら三作とも楽しめます。

てかまず、『リング』って“クトゥルー神話”なの?ってとこからですが、物語の構成要素から観れば、十分過ぎるほどそう呼ぶことができると思います。まぁ、厳密に言うのであれば、H・P・ラヴクラフト作品をモチーフにした設定が多いということで、それを以て“クトゥルー神話”と呼ぶかどうかは異論あるかもですけど。

小説版は大昔読んだけどよく覚えてないので、映画版でのネタを元にクト要素をいくつか挙げてみます。

まず、『リング』における貞子の母親である山村志津子に関する供述。「志津子はずっと海ばかり見ていた。」「わしら漁師にとって海は魔物。」「よく海と何かをしゃべっていた。人間の言葉ではなかった。」とか、貞子の母親による、ネガティブなイメージの海との交信が語られていますけども。

これは、『インスマスを覆う影』の“悪魔の暗礁”との交易をモチーフにしてると思います。

また、ビデオ音声の「しょーもんばかり…ぼうこんがくるぞ」(水遊びばかりしてると化け物が来るぞ)も、明らかに“水に関わる魔物”つまりは“ダゴンやその眷属”に対する畏怖を表した言葉です。とにかく、“水”や“海”をモチーフにしたホラーものはクトゥルー神話とこじつけ…親和性が高いですね。

貞子の出入り口がテレビなのとかも、異世界と通じる窓を描いた『破風の窓』なんかを彷彿とさせます。

『リング2』においては、さらに貞子出生の秘密において、「母親志津子は海辺の洞窟で貞子を生み、一度は海に棄ててきた。」「しかし、翌日また拾ってきた。」「その洞窟は、いらないものを置いておくと満潮時に全部海が持って行ってくれる。」などなど、殊更に海との関連性が語られています。

そこで中谷美紀が「貞子の父親って…」とぼそっと一言だけ言うシーンは、次作への伏線。

『リング0』においては、貞子の実の父親は伊熊博士ではなく、明確に“海から来た化物”と語られます。そして、貞子も実は双子で「一人は母親似だったが、もう一人は父親に似ていた。」という極めつけの台詞があります。言わずもがな「ウィルバーよりもさらに父親によく似ていた」でおなじみの『ダニッチの怪』。

さらに、その父親似の方を幽閉していた隠れ部屋のくだりは、『閉ざされた部屋』の描写そのもの。

他にも、貞子の死体と井戸があるコテージに端を発する変死・発狂事件なんてまるで『忌まれた家』。『リング2』の冒頭の死体安置所のシーンは『死体安置所にて』。同作に出てた深田恭子は“深きものども”とゴロが似てるし、もう挙げては枚挙に暇がありませんね。クトゥルー神話ものとしての証拠は十分と思います。

てゆか、貞子の設定と『崖の上のポニョ』のポニョの設定がそっくりだって今気づきました。

いずれも、“社会に適応できない片親(またはそうならざるを得ない力を持った片親)が、海神またはその眷属と結ばれ、そうして生まれた強力な力を持つ子供”という、あまりメジャーとは言えないキャラ設定面で共通しています。そもそも、“ポニョ=クトゥルー神話説”は以前書いた(感想文)通りです。

なるほど、他にも“能力を行使する時だけ、容姿が異次元の方向に似ちゃう”とかも共通してますね。

そして、人間の男の子と恋に落ちるところも。(貞子の場合、男の子って言うか田辺誠一。)その恋路と苦難を乗り越えていく中で、周囲にだいぶとばっちりがあるところまで。ああ、そうすると、そーすけはやっぱ最終的にポニョにとり殺されてしまうんですね。そして、ポニョは所ジョージに鉈で殴られて井戸に堕ちて怨霊化…。

「ポニョ、呪い殺すの好きーっ!! 呪いのビデオ撮るーっ!!」