てすかとりぽか

最近はポケモンのことを書く場所です。

『ヒックとドラゴン』 この島では、ドラゴンだ。

年末押し迫って、個人的にナンバーワン作品かも…。

ヒックとドラゴン

2010年のアメリカのアニメ映画。ディーン・デュボアとクリス・サンダース監督作品。

全てにおいて完成度が高い!物語の疾走感はハンパない!とか、そういう月並みな賛美の言葉ですらいくらでもでてきますけど、なんといっても個人的にド直球ド真ん中に趣味が合う作品。いや、自分ていうか、『ドラゴンクエスト』を筆頭にしたJRPGで育った、我々30代男性に照準し容赦なくヘッドショットしてくる作品。

兎に角、子供向けアニメだと思って、これ観ないと絶対に人生損していますぜ!!

ていうかもー、劇場で観なかった時点で自分が人生損してるわー。まじ死にたい。しかも、3Dで観るべきだわーこれ。うおぉ、このシーン3Dになってったのかちっくしょーーーっ!!っていう戦闘画面がてんこもりですよ。『某・イン・ワンダーランド』的に「3Dにするためにいらないシーン足しました。」てんじゃないもん。

兎に角、物凄いファンタジーなんですわ。しかも、ドラゴンスレイヤーものなんですわ。

ドラゴンクエスト』や『モンスターハンター』などなど、日本人ってドラゴンを退治するヒロイックファンタジーが大好き。逆になんで海外ではそれほど人気ないのか不思議というか、単にゲームの入り口がRPG・アクションではなく、FPSだからってことなんでしょうけど。ドラゴン退治系FPSとかないのは不思議。

兎に角、そんな日本人の好きなファンタジー世界全開で繰り広げられている作品なわけです。

アニメで言うなら『ロードス島戦記』みたいな。でも、あれは別にドラゴン出てくるけど、ドラゴン退治ものではないしな。逆に、スタジオジブリあたりがどうしてこういう日本人ド直球のドラゴンものを作らなかったのかが不思議なぐらい。本作品の監督のお二人はスタジオジブリマニアとしては有名らしいですけれども。

え…?『ゲド…』…?なんかいいました…?

ドラゴン退治で有名なファンタジーといえば、真っ先にトールキンの『ホビットの冒険』が浮かびますけど。そして、これも映画化が予定されてて頗る楽しみなんですけど。決して本作はトールキンのようなハイファンタジー臭はなく、あくまでもJRPG的なファンタジーを狙ってるのがまた好いいんですよね。

特にナルガ…ナイトフューリーという種類のドラゴンのトゥースのキャラクターが素晴らしい。

単なるモンスターでもなく、またペットでもなく、主人公ヒックの“相棒”としての描かれ方の妙。トゥースは野獣ほどディスコミュニケーションでもなく、また犬ほど従順なわけでもなく、あくまで“猫”ぐらいの距離感を持っています。ていうか、トゥースに限らず出てくるドラゴンが総じて猫っぽい。

ていうか、弱点が猫と同じすぎるだろっ!!

そういう意味で、犬好きの方よりは、おそらく猫好きの方のほうが、本作の“主従関係の絶妙さ”がご理解いただけるかと思います。また、それに対するヒックの及び腰感がまた好いのです。決して“力”や“利害”ではなく、“情”と“信頼”で結びついているのって、異種交流モノとしても意外と珍しいですよ。

さらに“竜殺し”をテーマとして描きながら、決して暴力的な映画ではないということ。

「敵はころしてうばいとる」がモットーのアメリカ精神(を持っている父親)を真っ向から否定し、「敵とわかりあえる」と主張するヒックからして、極めてJRPGの主人公って感じがします。最近はJRPGやってないのでどうかは知りませんが、『ガンダム』とか観てても、最近のは「わかりあい」がテーマですしね。

そして、ネタバレになるので詳しくは言いませんが、巨大なドラゴンのスケール感が凄い。

単にデカイ敵を作って、映像にとってもデカくは見えないもんなんです。デカく見せる工夫をしてるからこそデカく見えるんです。『ゴジラ』をはじめとして、かつてその方面では世界最先端を行ってたのは日本だったのですけど。俯瞰や呷りによるカメラワーク、スローモーションなどの映像編集や、サウンドなどによって。

最近は巨大ロボットが出てきてもさっぱり巨大に見えないとか、困ったものなんですけど。

本作に出てくるあるドラゴンは本当にデカい。ここまでデカい生物として印象に残ってるクリーチャーって『砂の惑星』のサンドウォームぐらいだと思います。CGだと『タイタンの戦い』のクラーケンもデカかった気がするけど、なんか5秒ぐらいで死んだから印象には残ってませんね。

個人的に『モンスターハンター』が好きなのだって、「デカいドラゴンが倒せるから」って理由です。

なんていうか、とりあえず圧倒的にデカいドラゴンないしモンスターって、倒せないし、そもそも倒そうとも思わないものなんですよね。ファンタジー作品の中においては。『ドラゴンクエスト』で倒してたドラゴンとかも、『ロードス島戦記』で滅茶苦茶苦労して撃退してるのを観ると、尋常じゃねーなオイって。

そんな中、『モンスターハンター』の“老山龍”は、最初こそ踏み潰されて蹂躙されて当然のように負ける中ボスなんだけれども。徐々にギミックを理解してくると、背中に乗って爆弾を仕掛けたり、龍撃槍ぶち込んだりと、納得できる形でダメージを与え、撃退できるようになり、終には狩猟することができるようになります。

(今はソロで片手剣とかで狩れちゃうんだけどな。)

そういう、最初に負けに負けて、詰んで詰んで、フラストレーションを植えつけられて、そのうちに知恵を工夫を振り絞って勝てるようになるっていうのは、ゲームでもアニメでも映画でも最も根本的な部分のカタルシスだと思うんです。実際やってることは“物凄いデカいドラゴンを、小さな人間が倒す”ってそれだけなのに。

そして、『ヒックとドラゴン』はソレを完璧な形で実現した映画なんだと思います。

昨今の日本アニメでもアメリカ映画でも辟易しているのは、“なんかすごい血をひいてる”とか、“神々に守られてる”とか、そんな主人公が活躍するものばっか。そんなんがどんなにデカい敵を倒したところで、ぜんっぜんうれしくもなんともないんだよねッ!むしろ、腹立つねッ!そういうルサンチマン野郎なんでねッ!!

ハリーポッターと某』とか観てても!心の底では「リア充氏ねッ!」って思ってます。(本当。)

だからこそ、本作のヒックのような“持たざるもの”が、“知恵”と“勇気”だけを武器に、“やさしさ故に手に入れた相棒の力を借りて”、そして“巨大なドラゴンを打ち倒す!”という。こんな話に魂が浄化されないわけがないっでしょーがよ!!こんちくしょー!!最高ッだよ!!『ヒックとドラゴン』!!

最後に、ドラゴンの絵が良いですね絵。画集ないですか?押します。すぐ押しにいきます。