てすかとりぽか

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『インモータルズ -神々の戦い-』 良い切株と悪い切株

“切株”とは、映画で人体が破壊・切断される描写を指す。
切株映画”とは、人体破壊描写に焦点を絞った映画作品のことを指す。

インモータルズ -神々の戦い-

インモータルズ -神々の戦い-』は、2011年のアメリカ映画。ターセム・シン監督。

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個人的に“悪い切株映画”とは、人体破壊描写を多様することで“この映画は怖いんだ。残酷なんだ。”というメッセージを伝えようとしてくる作品。まるで中学生が背伸びしてタバコを吸って不良ぶってるのと同じ。あくまでも人体破壊描写を“手段”として利用しているに過ぎない作品。

“良い切株映画”とは?勿論、人体破壊描写を至高の“目的”としている作品のことです。

ジョジョの奇妙な冒険』第5部に、“ホルマリン漬けにされた輪切りのソルベ”というとても有名な切株描写があります。あのシーンの元ネタは、イギリス人の芸術家ダミアン・ハーストによる“動物の輪切り”等の作品群ですが。おそらく同様の描写が見られる『ザ・セル』という映画も“輪切りのソルベ”の元ネタだといわれています。

その『ザ・セル』で芸術的な切株描写を魅せた監督こそ、本作のターセム・シン監督なわけですけど。

本作中の切株描写はさらに美しく、おぞましく、芸術的なものに昇華されています。ぶっちゃけアンタそれがやりたかっただけだろ?ストーリーとかそのへんどーでもいいんだろ?神々によって生み出される超高速な殺陣の中でキラキラ光りながらスローモーションで飛び散る臓物を魅せたかっただけだろ?

“人体破壊描写を至高の目的とした映画”じゃないなんていわせないぞコノヤロー!!

おかげさまでというか、世間一般の評判は酷いもんですよ。Goo映画のレビューで“平均点数20点”なんて久々に見ましたよ。「ストーリーがひどすぎる」、「中身が全くない」、「何がしたいのかわからない」とか、もう散々な言われっぷりですよ。個人的には、ストーリーはそれほど酷くないとは想うのですけど。

ただ、百歩譲ってストーリーがダメだとしても、あの戦闘見て血沸き肉踊らない人とは友達になれないです。

なんというか、形容するのが難しいんですけど、『聖戦士聖矢』の設定で『ゴッド・オブ・ウォー』の戦闘を描くとあんな感じになるんじゃないのかなと。兎に角、神様VS神様の戦闘が凄まじいの一言。良い神様ことオリンポスの神々と、悪しき神々タイタン族が超高速で滅茶苦茶格好いい肉弾戦をするわけなんですが。

オリンポスの神々の攻撃の方が、悪いやつらより100倍ぐらい残虐でえげつないんですよね。

昔、『きこりの切株』っていうお菓子があったんですが、もうアレを何箱もまとめてぶちまけたような。で、それを色んな角度からハイスピードカメラで捉えて、体液やら腸ひもやらが飛び散る様を美しく、神様たちが纏う黄金の鎧と対比した色彩も併せて兎に角美しく描いた、“究極の切株”を堪能できるのです。

その美しさだけでも、あまのじゃくな思いぬきで、2011年ベスト映画だと思います。

自分でも全く期待せずに観に行ったので、まさにダークホース。それ故に、やっぱりタイトルがダメダメだと思うんですよね。『ドキッ!切株だらけの神様大乱闘!』ぐらいですよ。あと『落下の王国』でターセム監督を知った人は、普通にオサレな感じの映画だと思って観にきちゃうかもしんないですね。

“『落下の王国』の”って意味でも期待はずれじゃないですけどね。描かれる古代ギリシャ世界は完全に類似の作品とは異質。悪い意味じゃなくて“キチガイ地獄”な感じです。開始直後にいきなりそういうシーンになるんで、その時点で「ダメだわ…」って想っちゃった人は、その後も絶対ダメな気がするけど。

また、微塵も“ネタに走っている”感じもなく、至って“大真面目”な作風なんですけど。結果的に“神様(とくにゼウス)が頭悪い”ので、つっこみどころ多くて笑えます。詳しくはいえないけど、かわいそうな息子アレス。親父が馬鹿で短気なばっかりにあんな姿になってしまって。最低の馬鹿親父サイコーすぎます。

そういう、“神様がアッタマ悪い”っていうのは、元のギリシャ神話の特徴でもあるんですよね。

神様が怒りっぽかったり、残酷だったり、女好きだったり、酒好きだったり。それで失敗して(人間が)酷い目に遭うって話が多いのは、あえてギリシャ人が神様を“人間くさい我々と近しい存在”として描きたかったからと言われています。それは、同じく多神教である日本の神様にも言えることですけどね。

反面、キリスト教などの一神教では、“神は人を律すべき完璧な存在”として描かれています。

このため、多神教のインド出身のターセム監督が描いた多神教の世界を、キリスト教国であるアメリカのハリウッド映画の文法で理解しようとすると、「意味がわからない」と感じてしまう人が多いのは仕方のないことなのかなーとは想いました。そのはるか以前に切株メインでキチガイキチガイした世界感ですしね。

いやしかし、今年はボンクラ映画が豊作ですねー。