てすかとりぽか

最近はポケモンのことを書く場所です。

『邪悪なものの鎮め方』 超能力は実在する

光が丘公園でお花見してきました。

成増に住んでた頃にたまに行ったことがありましたが、花見の時期なのでもう光景が一変。人、人、人でごった変えしておりました。ここまで人口密度が高いイベントに参加したのはコミケ以来な気がします。あまりに人が多くてドミノピザの人も場所がわからず、入口まで客に取りにこさせていました。でも、楽しかったでした。

      • -

邪悪なものの鎮め方

内田樹著。"「邪悪なもの」と遭遇したとき、人間はどうふるまうべきか?どうしていいかわからないけれど、何かしないとたいへんなことになる極限的な状況で、適切に対処できる知見とはどのようなものか?この喫緊の課題に、ウチダ先生がきっぱりお答えいたします。"という序論を読んで興味をもったご本。

前半1/3が序論と無関係な書評だけで水増ししてあり、この時点で既に充分「邪悪なもの」の具体例。

よくよく考えてみると、『現代霊性論』で持てた共感のほとんどは、共著者である釈徹宗さんという浄土真宗の先生のお話で、このウチダ先生のお話ではなかったんですよね。正直、自分的にはこのウチダ先生のおっしゃっていることにことごとく違和感を感じます。そもそも、論というには根拠が乏しすぎて、所感にしか見えないです。

その根拠が乏しい所感で、特定の人を犯罪者扱いしたり、批判するのがスタンスなので尚更厭な感じ。

そういう社会に対して毒を吐くこと自体は悪いこととは思わない(お前が言うなって話だし)のだけれど、その根拠を明確に示さない、「なんとなく嫌いだ」レベルの話、要するに個人ブログレベルの話をわざわざ著名な先生が大層なタイトルを掲げてご本にするようなことはないんじゃないのかと感じてしまうわけです。

でも、そういう個人ブログレベルの所感の方が、今の若者受けはよくて売れるんだろうなーとは思います。

実際、ウチダ先生の書く文章は面白いです。村上春樹1Q84』の物語構造、コピーキャット型犯罪が内包する恐るべき罠、ミラーニューロン幽体離脱、被害者の呪い、霊的体験とのつきあい方から、草食系男子の問題まで、噛み砕いて誰にでもわかりやすく説明するのが非常に巧い。そして、アプローチの仕方も独特です。

例えば、現代における客観的判断の根拠となる「数値主義」に対する批判について。

"現代では、判断の当否について常に「数値」が求められ、数値をもって客観的に示すことができない「知」は知として認識されない。この数値は科学技術とそのつどの限界によって規定されてしまう。"という命題に対しても、ご自身の豊富な読書体験を通じて、次のような興味深いアプローチをされておられます。

"『生物と無生物の間』で読んだけど、その昔イワノフスキーという人は、顕微鏡で見えないウイルスの存在を証明した。それは見えないものの存在自体を証明したのではなく、「見えないものが存在しないと辻褄が合わない」ということを証明したのだ。だから、現在の「数値主義」という病態は「科学的に正しい態度ではない」。"と。

『生物と無生物の間』なら自分も読みましたが、"イワノフスキーはちゃんとした実験結果(タバコモザイク病の病原が細菌濾過器を通過しても感染性を失わないこと)から、「数値的にも」ウィルスの存在を示している"筈なので、上記の批判の根拠は的外れだってことは置いておくとして、説得力はある話ですよね。

ただ、問題はその後につづく先生のお話。"だから『超能力』や『霊能力』は現に存在する!"と。

"「そういう能力が存在する」ということを前提にしないと、「話のつじつまがわない」から「存在する」"とウチダ先生はおっしゃいます。しかし、"数値的に示すことができないが、その根拠はある。しかし、列挙するには多すぎる"と、重要な部分は逃げるんですね。逃走経路確保としての、事前に「数値主義の批判」だったわけですね。

大槻ケンヂが、昔こういう話をうまいこと定義づけてましたね。「UFOはプロレスだ!」って。

UFOもプロレスも、嘘っぱちだ八百長だとは言われてはいるけれども、その実在やガチを証明する事例は数限りなく存在する。そして、"本気で信じている人が少なからずいる。"ということ。彼らは"実在しないと辻褄が合わないから実在する。"という語り口を多用すること。だから、"UFOもプロレスも同じなんだ!"って。

ウチダ先生の場合、おそらく本気で言ってる方なんですよね。
京極夏彦みたいに「超能力ですか?もちろん信じてますよ(笑)」な感じではない。
バックダッシュで逃げながら、超能力を認めない社会やメディアに対して、全力で石を投げつけてるし。

個人的には「超能力も霊能力もあって欲しいけど、根拠なく存在を認めはしない。」というスタンスなので、是非ともウチダ先生には、逃げずに真正面からその「列挙するには多すぎる根拠」を武器に社会やメディアと闘って欲しいんですけどね。たぶん、アッチ側の世界にいる著名人の中では最強の論客に成りえると思っていますので。