『善光寺さま』
先週末、実兄がリアルでうちに遊びにきてました。
実兄はふだんヴァナディールという異世界に棲んでいるのでリアルでいるのは珍しい。
で、なんか善光寺に行ってきたらしく、もらったおみやげがこれ。
教育まんが『善光寺さま』
ごめん。もう持ってた。
20年前にばあちゃんからもらって、あまりのジャケと中味のセンスの好さに感激し、本をあんまり大事にしない自分がいまだに大事に持ちつづけている数少ない蔵書の一つです。何気に前半フルカラーだったり、とっても手のこんだ同人誌ですが、このバージョンはもう絶版なんだそうです。
現行バージョンはこの『善光寺さん』なんだそうな。
タイトルがやや謙虚なものに変わっているほか、「ZEN KO JI SA N」とローマ字で振り仮名も振ってあります。外国人が買うんだろうか…。ジャケも中味のまんがもやや今風の絵にアレンジされてはいますが、『善光寺さま』のスタイリッシュさには到底およばない感じです。
善光寺は仏教が各宗派に分かれる前からあるものすごく旧いお寺です。一説によれば蘇我氏に謀殺された物部氏の怨霊を封じているとかそういう生臭い由来がありますが、そういう「怨霊封じ」に使われた寺社仏閣はそんなに珍しいものでもないです。
そんなことより、善光寺の本尊である善光寺如来は「秘仏」です。
数十年に一度の開帳の時でさえ拝観できるのは、前立本尊といわれるレプリカだけ。「善光寺縁起」によれば、西暦645年には秘仏化してるって話ですが、密教が盛んになるよりもずっと以前に秘仏って概念があること自体が実は変な話。
そもそも、よその寺のは秘仏とはいっても数十年に一度は開帳されてるのにも関わらず、善光寺のソレは「絶対秘仏」と呼ばれるが如く絶対に開帳されません。普通に考えると、それって開帳しないんじゃなくって開帳できないんじゃない?実はもうなくなっちゃってるからとか…?
否、秘仏だから開帳されないのではなく、開帳されないからこその秘仏なんでしょう。
自然科学における観測者効果とは、観察するという行為が観察される現象に与える変化を指します。物理学では、より一般的な観察者効果として、機器による観測で観測対象の状態を必然的に変化させてしまうことを指すこともあります。
例えば電子工学において、電流計や電圧計は測定対象の回路に接続する必要があり、それら計器が接続されることで測定対象の電流や電圧が影響を受けます。同様に温度計は温度を記録するために何らかの熱エネルギーを放出しなければならず、測定対象の温度に影響を与えてしまうのです。
同様の理由で、外部からの観測に伴う性質変化を避けるための絶対秘仏化なのではないのかな。
シュレーディンガーの猫という有名な思考実験では、猫は観測されるまで死んでいるとも生きているともいえない。(シュレーデインガーの猫は観測者効果ではないけれど。)量子力学で事象の結果が直接観測できないとき、それは可能性を重ね合わせた状態、いわば全ての可能な状態が同時に存在していることにもなります。
仏であるかもしれないし、仏でないかもしれない全ての可能性を秘めた仏。
それこそが善光寺絶対秘仏の性質なのではないんでしょうか。
嗚呼。あと、もう一冊もらったのが、この『おしゃかさま』。
こちらも、中味は手塚治虫の『ブッダ』のパクリ…とか言うのは失礼ですね。
『ギャグまんが日和』みたいな感じで面白いです。
「ネコちゃんの腹筋」みたいな絵で。