てすかとりぽか

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『フライト』 二日酔いは迎え酒で治せ

フライト

2012年のアメリカ映画。ロバート・ゼメキス監督。

TVCMぐらいしか事前情報なく観たので、ほんっと吃驚しました。当然ながら、飛行機事故で機体が一回転しながらも奇跡の着陸劇を繰り広げるパニックムービー感動巨編みたいなのを想像してたので。というか、2パターンあるTVCMの両方ともそういう内容じゃないっすか。そーゆー意味では、あのTVCMは上手いなあ。

だもんで、まだご覧になられてない方は是非、TVCMの先入観を持ってご覧になられてほしいです。

というか、日本での興業収入が公開初週で1位になってますけど、殆どの人はTVCMの先入観で観に行って、ポカーンとしてたんじゃないんでしょうか。そんぐらいぶっとんだ話です。こんな地味なタイトルなのに。そういうわけで、以下はネタバレ含むお話なので、ご注意くださいね。

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藤子不二雄(A)の漫画『笑ゥせぇるすまん』の「ケーフィア」という話に似てるなあと。

栄養ドリンクなしでは仕事ができない栄養ドリンク中毒の男が、喪黒福造からケーフィアという健康飲料をもらい「二度と栄養ドリンクは飲まない」と誓い一時は健康体になるも、結局また栄養ドリンクに手を出してしまう。おそらくA先生が本当に描きたかったのは「アルコール中毒」なんだと思いますが。

本作は、どストレートに「アル中」を描いた作品なのです。

もう初っ端から泥酔して全裸スッチーとの朝チュンからのコカイン鼻一気をキメてフライトに望むデンゼル機長。もう、事故以前に死亡フラグ立ってる主人公って段階でお客さんポカーンですよ。さらに機内アナウンスしながらの片手でウォッカ(ミニボトル×3)入りのオレンジジュース調合でありますよ。

なにひとつ1%たりとも生き残れる気がしないよこの主人公。

いや、ギャグかと思うけど、本当にアル中の人ってこうなんですよ。会社でも「酒飲まないと仕事できないから」って、500mlのミネラルウォーターのペットボトルに焼酎入れてきて、仕事中にちびりちびりやってるんすよ。もちろん、酒臭えから大抵はバレるんだけどさ。中にはバレないでやってる奴もいるかんね。

そんな奴が、飛行機のトラブルをものともせず神業的な着陸で多くの乗客を救ってしまう。

いるんだよね。めちゃくちゃ酒癖悪くて朝とかアルコール臭いんだけど、めちゃくちゃ仕事もできる人。たぶん、アルコールとその人の能力に関連はないんだろうけど、なぜかそういう風なスキルテーブルになっちゃってる人。能力があるのに酒で失敗するせいで出世の道が閉ざされてる不遇な人。

本作は、そんな不遇な主人公に光がさす…ような話では全然ないです。

その神業を英雄視するマスコミを避けて実家の農場で暮らす間も、基本12Lペットボトル(ウォーターサーバーに使うアレ)一杯の酒を車に積んで両手抱え飲みした上でのドライブですよ。事故後の検査で薬物とアルコール反応が出たことを事故調査委員会に知られることを危惧する弁護士が、当然酒を止めるように促しても…、

このアル中が1ミリも話聞いちゃいねえ。酔ったままマスコミの前にでってゆうしちゃう始末。

こいつはやべぇ!こいつのせいでウチの会社は終わる!と危惧した航空会社と弁護士は、彼を事故調査委員会との公聴会までの間彼を隔離し、アルコール絶ちをさせようとしますが…。なんと、ここからが本作の真骨頂。まさか、まさかの大逆転の連続!飛行機が一回転するなら、物語は二回三回回るのです!

もう、一番面白いところが、倫理的な理由で書けないのが辛い。てか、PG-12でいいんだこれ…。

二日酔いを迎え酒で治すようなバカ酒飲みのPOV視点で描かれるトンデモ映画が、感動作みたいな?感じで勘違いされつつも国内興行収入1位に輝いたという事実が、何より面白くて仕方がない。たぶんテレビ放送されなそうだから、是非劇場なり何なりで観ていただきたい1本だと思います。

参考資料:ロシア人の酒の飲み方