『ほんとにあった!呪いのビデオ18』
『ほんとにあった!呪いのビデオ18』日DVD
もう18作目にもなりますか。
今回は熱心な「ほん呪」ファンにして、
精神病で通院中の高校生ことTさんに突撃取材するお話。
妄想の中で自身を傷つける人々を呪殺しようとすると同時に、
自身のもう一つの人格「黒狐」の存在を恐れるTさん。
ほん呪スタッフは、このTさんの妄想を「狐憑き」として肯定し、
あまつさえ呪いの儀式のお手伝いをしてしまいます。
Tさんのような分裂病(統合失調症)患者が認識している幻覚・妄想は、
脳内物質の異常分泌に対する防衛機制によるものに過ぎません。
つまり、外傷に対しての瘡蓋のようなもので、
薬物投与により脳内物質の分泌さえ安定化させることができれば、
防衛機制としての幻覚・妄想は押さえ込むことができます。
このため分裂病治療の基本方針としては、
幻覚・妄想は患者の自覚症状に限られたものに過ぎないこと
を患者自身に信用させ、薬物投与を自発的に促すことが重要です。
逆に最もしてはいけないことは、
周囲の人間がその妄想を肯定してしまうこと。
本来患者自身の自覚症状でしかなかった幻覚・妄想は、
外的な第三者により肯定・同意を示されることによって、
患者にとっては普遍性をもった現実として認識されてしまいます。
つまり、今回登場したTさんは、
彼が呪いの専門家と信じて止まない「ほん呪スタッフ」により、
『あなたは狐憑きですよ』という啓示を受けたことにより、
自身が「狐憑き」であることに揺ぎ無い論理性を持ってしまいました。
さらに、Tさんはほん呪スタッフより安部晴明のビデオで使用した、
「呪符」を受け取ったことにより、呪殺の儀式を始めてしまいます。
そして、恐ろしくなったほん呪スタッフは、
彼の儀式を見届けることなく、その場を立ち去ってしまいます。
この呪殺の効果が成就することは100%ありません。
但し、ほん呪スタッフがTさんに与えた「狐憑き」という自己認識、
この無意識にかけた「ほんとの意味での呪い」は効きました。
おそらく、今後彼は一生涯自身を「狐憑き」と信じて疑わず、
医者や家族の助言も一切聞き入れず、薬物投与を受けることもなく、
精神病が治るどころか最悪死ぬまで隔離病棟で暮らすことになります。
今回、各所の批評では「やらせだ」とか「霊が出ないからつまらない」
とか散々な言われようなこの「黒狐完結編」ですが。
とりあえず「やらせ」という穿った見方を捨て、
ありのまま「精神病者迫害ドキュメンタリー」として観て、
明示されていない「ほんとにあった呪い」部分を発見し、
さらにそれをジョークとして理解するのであれば、
今回のはそれなりに面白いと思う。
あと、こういった恐怖映像に対して「やらせ」って主張するのは、
耐えられない恐怖心に対しての防衛機制なんですね。
『ノロイ』をみて「やらせだ!」って、
勝ち誇ったように言う人が多いのを見て思った。
ノンフィクションもフィクションのひとつです。