『ライブドア』
『ライブドア』
私がまだ小学校にあがる前の話。
母が小学校の教師で忙しかったのもあって、
私は毎日のように父の車の助手席にのせられて過ごしました。
そこでコーラアップを食べながら、父の仕事先を連れ回られて育ったものです。
父の仕事がら、証券会社という場所によくいきました。
証券会社というのは、株というものを売っているお店のことだそうです。
そのお店入ると、壁いっぱいにぴかぴかした数字が光っていたのをおぼえています。
そして、いつもこわれた人間がたくさんいました。
こわれた人間は、みんなあーとかうーとか言ったり、ぶつぶつ言っていたり、
中には大声で叫び声をあげているのもいました。
私が怪訝そうな顔をしていると、父は言いました。
あのひとたちは、株が暴落して頭がおかしくなってしまったんだよ。
株を買うような人間は、それを失う覚悟なんてできていない人間ばかりなんだ。
その覚悟ができていない人間がすべてを失ってしまうと、頭がおかしくなってしまうんだ。
私はなんとなくしかその話をきいていなかったのですが、
そんな人間になるのはやだなあと思いました。
あれからもう20年もたった今日、
キヨスクで売ってるスポーツ新聞の「ホリエモン 自殺」という一面記事をみて、
(新聞を広げたら「ホリエモン の幹部 自殺 疑惑?」でしたけど。)
なんとなくそんな幼少時代のことを思い出しました。
どうやら昨日から、
投資と投機の区別もつかないような馬鹿がたくさんたくさん、
株で大損しておおさわぎしているみたいです。
本質的な意味で投機とギャンブルは同じものなのに。
なまじギャンブルであれば、失う覚悟ができているものなのに。
最近流行りではじめたような、自称「個人投資家」のみなさんときたら、
資産運用・副収入・預貯金がわり・趣味娯楽といった言葉に薄められ、
さらにインターネット取引という安易な手段にぬるめられ、
失う覚悟なんてまるでないんです。
そんなみなさんは、
死ぬ覚悟ができていないみなさんは、
無意味な死を受け入れることはできないんです。
ただ、こわれてしまうんです。
精神分裂病のひとたちが見る夢は、
脳への急激なダメージがあった場合に働く防衛機制なんですって。
失う覚悟ができていない人間が、突然失ってしまうことによる急激な脳へダメージ。
それが、株が人を狂わすメカニズムなんだと知ったのは結構最近のことです。
昨日、こわれた人間はどれぐらいいるのかな。