てすかとりぽか

最近はポケモンのことを書く場所です。

『エミリー・ローズ』

エミリー・ローズ』米映画

2005年。スコット・デリクソン監督。
実際にあった事件とその裁判を元にしたホラー映画。
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エミリー・ローズは、どこにでもいる普通の女の子。
ちょっとだけ、突然恐ろしい幻覚や凄まじい痙攣に襲われたり、
ご飯が全く咽を通らなかったり、稀に自傷・他傷行為の癖がある以外は。

そんなエミリーもお年頃(享年19歳)。
治療のために「悪魔祓いの儀式」を受けることに。
でも、その甲斐もなく、栄養失調と自傷行為によりポックリ。

そして「悪魔祓いの儀式」をした神父さんは「過失致死罪」で告訴されてしまいます。
彼女の症状が「精神病」であり、治療を施さなかった神父に罪を求める検察側、
対して「悪魔憑き」が原因であり、神父にその責はないとする弁護側、
ここで「精神病理学VS宗教」の法廷バトルがはじまります。

ん?そろそろホラー好きなら気づく頃合。
「ぜんぜんホラーじゃないよこれ?法廷モノじゃん?」
完全に法廷モノで。ホラーの要素欠片もなし。広告・公式サイトに偽りあり。
ただ、法廷モノとしてはだいぶ面白いので、JAROに電話は後にして続きを見ましょう。

常識で考えたら「科学VSオカルト」なわけなので、
論理的整合性が重視される法廷では勝負になんないと思われますが、
実際は「精神病理学」だって科学的な裏づけがないオカルトみたいなもんだし、
徐々に「悪魔憑き」のほうが論理性を帯びてきてしまうという好展開がこの作品のキモ。

で、こんなん海の向こうの話だけかと思ってたら、
日本でもこのテの「憑きもの」に関する事件や判例がたくさん。

[昭和30年・埼玉県大里郡寄居町]
妻に取り憑いた「オオサキ狐」を追い出すため、夫が祈祷師ら複数人とともに祈祷を行い、結果妻を絞殺。夫らは殺人容疑で逮捕されたが、当時この地方では「キツネ憑き」が信じられていたことを理由に警察では「犯意なし」と判断。一審では「加持祈祷の結果」として「業務上過失致死」が適用されたが、高裁にてこれを棄却「傷害致死罪」の判決。

[昭和45年・青森県蟹田町]
息子に取り憑いた「ムジナ」を追い出すため、母親が寝ている息子の顔を布団で押さえつけ、窒息死させる。

[昭和11年・山口県厚狭郡Y村]
母親に取り憑いた「タヌキ」を追い出すため、息子が寝ている母親の首を押し切り包丁で切断。「犯行当時、急性精神障碍にして、正常思慮欠如の状態にあった」として無罪。

[昭和37年・秋田県仙北郡西木村]
父親から「ムジナ」と疑われた息子が、自衛のために父親を絞殺。

[昭和52年・静岡県伊東市]
国道沿いのケヤキの木数百本に、総数5,000体以上の「箸人形」がくくりつけられる。警察や自治体が調査にあたったが犯人やその目的は不明。

[昭和33年・秋田市金足]
夜間、神社の境内で「丑の刻参り」を実行した女性を、近隣住民から通報を受けた駐在が連行。当初「殺人未遂」にあたるかどうか検討されたうえ「たとえ迷信であっても生命身体に害を与える目的の行為」として、「脅迫罪」を適用して書類送検

[昭和32年・青森県北津軽郡泊村]
「丑の刻参り」を実行した複数名が逮捕。青森県法務局は「人権擁護の問題」と判定し、刑法上は「脅迫罪」を適用。

と、ちょっと挙げてみてもだいぶあります。(参考文献:岩川隆『殺人全書』光文社)
日本版『エクソシスト』も作る気になればできるのね。