てすかとりぽか

最近はポケモンのことを書く場所です。

『ベスト・キッド』 武道とモンハン道

後半半分、自分の武道経験に関する話なので、眠くなると思います。

ベスト・キッド

2010年のアメリカ映画。ハラルド・ズワルト監督作品。

1984年の映画『ベスト・キッド』のリメイクでもあります。旧作はダニエルさんがミヤギさんに「ワックスかける!ワックスとる!」でカラテを教わって強くなる有名な“モンタージュ強化型スポコン映画”ですね。ソレが今回、ウィル・スミスの息子ことジェイデン・スミスとジャッキーが組んでのリメイク。

金持ちの親馬鹿の七光り映画です。はっ。

と、最初こそは敬遠してみたものの、世間的な評判もいいので観てみたら、これがまたちゃんと面白い。ウィル・スミス長男ことウィル一男とてもがんばってる。普通の演技の部分もアクション部分も、旧作のダニエルさん真っ青なクオリティに仕上がっています。てか、ライバルの男の子のアクションいいね。

百歩譲って見ても“カラテ”じゃないけどな。

原題が『THE KARATE KID』なので、それこそカラテの話じゃないの?とは思うんですけど、どうもジャッキーの意向でカンフーになったらしいんですね。(『王様のブランチ』情報)じゃあ、『カンフーキッド』にすべきじゃなかったのか?と当然思いますが、『カンフーキッド』って既出だし。こっちも好き。

“カンフーキッド(好小子)日本語吹替版”(You tube)

で、わりと内容は好かったのに、エンディングのスタッフロールに親が出てきたので台無し。

ウィル・スミス出てくんじゃねーよー!!息子の映画にしてやれよー!!本当こういうとこで空気読めない親だから厭だわー。てか、それ以外にもエンドロールで「ウィル一男と仲良くしてるライバル役の子」がでちゃうのもなんかひくわー。「作中ではいがみあってたけど、役者同士は仲良しなんです」アピールうぜえ!!

ドラマ『女王の教室』エンディングの、“天海祐希は本当はいい人なの!”アピールみたいでうぜえ!!

最近だと、『ハリー・ポッター』に出てくるドラコ・マルフォイ役の子が、「ハリー役の子とはほんと仲良しなんですよ!まじで!」と毎回インタビューで強調しますけど。そうでも言わないとカミソリとか送られてくるから仕方ないんでしょうね。んでも、そういうことは劇中で言わないですからね。世界観壊さないために。

でも、ジャッキーは掛け値なしに好かったですよ。というか、ジャッキーの映画でもありますね。

旧作のベストキッドでは、割とミヤギさんは物語から一歩ひいた“ドラえもん的役割”だったと思いますが、今回はジャッキー自信が立ち直る物語という要素も含んでいました。その要素だけでも、ティーンズ向けである旧作に比べて、大人の鑑賞に堪えうる作品に進化しているんじゃないかとは、大袈裟ではなく言えると思います。

そして、個人的には何よりこの作品に漂う“武道のスタンス”について共感してしまいます。

前作でいうところのワックスがけ、今作でのジャケット脱着など、一見何の役にも立たない単純な行動の繰り返しが、武道における技の反復練習になっているという点。この一見香港映画的かつマンガチックなセオリーこそ、まさしく武道における正しい鍛錬手段であり、逆にそれ以外の鍛錬は武道に非ざるとさえ思います。

少年ジャンプでありがちな“必殺技の習得”や“合理的な戦術論の会得”というのは、武道的ではないのです。

自分は、小学校に上がる前から剣道を嗜んできましたが、その練習時間のほとんどは“素振り”や“切り替えし”など、実質「何の役に立つんだかわからない」動作の反復練習で成り立っています。そんなことより、実践的な技を教えてくれたほうがいいのにとは、何度思ったかは知れません。

ぶっちゃけ、『六三四の剣』の武者先輩の「マシンガン突き」的な必殺技だけ教えてくれればいいのにと。

でも、そうした反復練習の動作を何百何千何万と繰り返していた結果、試合中に何の意識もせずにスッと技が出せるようになってるんですね。作戦を練って意識して狙った技なんかより、何故かわからず出た技が決まることの方が圧倒的に多かったりします。結果、何も考えないで戦った試合ほど、勝てるようになりました。

嗚呼、香港映画やダニエルさんのアレは、要するにこういうことだったんだなあと。

よくマンガの中であるような、冷静に思考して、作戦を練って、次の行動を決める、または相手の出方に反応するなんてことは、どう考えてもコンマ数秒の時間でできっこねーです。だったら、体に染み込ませた経験から、いつでも状況に応じた技を自動的に発動させられるようにしたほうが合理的、といういことでもあります。

今作では、その“勝手に体が動いて技が出た”という点を非常にわかりやすく見せてくれています。

ブルース・リーの言う「考えるな、感じろ」という台詞は今作中にも出てきますが、まさにコレを指してるんですね。ただ、それはよく「無心になること」と誤解されていますが、今回さらにジャッキーは「心が無いのと、穏やかなのは違う」とも言っています。ものすごくわかりやすく、武道のスタンスを説明してくれてるんですね。

ただ、こうした武道的な技は“反復練習を繰り返していること”を条件にのみ発動できます。

10年以上剣道とかやってない今やれって言われてもできません。てゆか、防具のつけ方すら覚束無くなるなること山の如しです。ただし、今なら『モンハン』での立ち居振る舞いには自信があります。何も考えなくても、閃光なげて罠おいて全部位破壊して罠おいて捕獲してできます。毎日してます。これもまた武道なのでは。