てすかとりぽか

最近はポケモンのことを書く場所です。

『怪 0019』

怪 0019』妖怪ムック

世界妖怪協会公認。世界で唯一の妖怪マガジン。
今回は『妖怪大戦争』の特集。

のほうはどうでもよくて、巻末に収録されている大塚英志による「岡田建文-戦時下の"件"」という論文が面白い。

柳田國男による戦時下の日記「炭焼日記」より、当時まだ学問として成立してすらいなかった民俗学が、国策科学として戦時体制に利用されていた事実について論じている。

例えば、ナチスドイツがアトランティス大陸説などオカルティズムを思想的背景に持っていたことは有名だが、柳田もまた国の要請に従い、日本古来の古史古伝・オカルティズム・ナショナリズムを融合したフェイクヒストリー作りに加担していたとかいないとか。

また柳田の友人でもあり、初期心霊学者の一人である岡田建文についても触れている。岡田は「理学」=自然科学によって心霊現象の全てを説明しようとしている、いわば心霊現象を「非科学的」と批判する井上円了的立場とは真逆の学説をもっていたとのこと。

柳田は岡田の学説の限界を指摘しつつ、彼の研究についても詳細な記録を残している。岡田は「妊娠十数ヶ月にわたる妊婦」おそらくは精神病者の語る未来予知について研究していた。

その妊婦曰く、腹の中の胎児が「大きな戦争が起きるから出てきたくない」と語るとのこと。岡田がその話を柳田に語ってまもなく、太平洋戦争が勃発。岡田も空襲により行方不明になってしまったという。

牛より生まれ未来を予知する人面の妖怪「件(くだん)」の一例であるかの如きとして、さりげなく『妖怪大戦争』に登場する妖怪のCMで話を締めている。ヘコー。