てすかとりぽか

最近はポケモンのことを書く場所です。

『Google vs セカンドライフ』

Google vs セカンドライフ 3Dウェブ仮想社会の覇権争い

ミクシィ疲れ」を社会現象として指摘したことでも有名な山崎秀夫さんの著書。カンタンに説明すると、『セカンドライフ』を代表とする3Dインターネット仮想社会が提供する技術により、既存の著作権型の収益モデルが崩壊し、広告型収益モデルへ変換される。その起爆剤となるのが、1,2年内に予想されるGoogleによる3Dインターネットへの参入であるというもの。

セカンドライフ』は、エポック社の「カセットビジョン」です。「カセットビジョン」は「ファミコン」が登場するまでは、「テレビゲーム」の中ではトップシェアを誇っていました。この後「ファミコン」の登場により「テレビゲーム」がブームになるわけですが、「カセットビジョン」はその「テレビゲーム」ブームの火付け役にはなれませんでした。

要するに『セカンドライフ』は、『There』や『HiPiHi』といった、既に数ある「仮想社会/3Dインターネット/メタバース(呼び方は色々あるものの以後メタバースと呼称)」の中で「現状トップシェア」ではありますが、未だ「メタバース」自体のブームの火付け役にはなり得ていないわけです。

そこで「メタバース」における「ファミコン」として、ビジネスウィーク誌上に掲載された「Googleメタバース参入」が最有力視されているんだそうです。それがどういった形で行われるかは不明です。現状「Google Earth」の上位版がそれにあたるという話も有力ですが、「動画共有サービス」において『Youtube』が買収された時のように、そもそも『セカンドライフ』自体を買収するのかもしれません。

いずれにしても「メタバース」の発展に伴うビジネスモデルの変革は間違いないと言われながらも、「アメリカンアパレル」ほか大手米企業の撤退や電通による国内での失態に代表される"『セカンドライフ』の低迷"という現状をみるかぎり、"「メタバース」の火付け役"としての期待が全面的にGoogleにシフトしてしまうのは仕方ないんじゃないかと思います。

個人的には、その"『セカンドライフ』の低迷"の近因は、周囲の期待に反する"運営会社(リンデン社)のやる気のなさ"だと考えます。システムにしてもセキュリティにしてもサポートにしても全然やる気が感じられない。TBSが亀田家をいくら盛り上げても、その亀田が試合でダメだったら意味がないっていうのと全く同じです。その本質を見極めるための試合が「Google vs セカンドライフ」という構図になるわけですね。

で、ここまでが前置き(長っ)で本の内容なのですが、別に「Google vs セカンドライフ」がどうなろうが関係なく、いずれの場合でも企業の介入の仕方はかくあるべしと、ためになるお話が書かれているわけです。

具体的には、これまで「『セカンドライフ』?新しいホームページみたいなのだろ?とりあえずウチもやっとけ!」みたいにやってた企業の参入がうんこであることはわかった。ならば明確に実利を追求するための戦略を練ってやっていこう。そのためには、社会的販促効果とそれを得るためのシナリオを考えないといけないよんみたいな。

なんで「『セカンドライフ』でアイテム売って一攫千金!」とか考えてるクリエイターの方々にとっては役に立たない内容です。むしろ、本質を突かれてむかつくと思うので読まない方がいいです。(『セカンドライフ』に頻繁にログインしている、15%のヘビーユーザー・リピーターの類は「企業は無視すべし」とも遠まわしに書いてあります。)

どっちかといえば、今後何らかの「メタバース」に参入を考えている企業の企画担当の方、コンサルタントをされる方、今後の仮想世界の行く末に興味のある方、自分みたいなネトゲオタにとっては非常にためになるご本としてオススメです。

注)「メタバース」と「メタバーズ」は全く違うものです。『プレイステーション』と『プレイディア』以上に違います。未だに著名人の中でも誤用している人を見かけるので気をつけましょう。

前者はSF小説スノウ・クラッシュ』の中で使用されたメタ(meta)とユニバース(universe)の合成語で「インターネットを通じて接続できる電子データとして構築された3次元空間」の俗称。広義ではMMOPRGもあてはまりますが、狭義として『セカンドライフ』や『There』みたいな「仮想社会、3Dインターネット」を指すことが多い。

後者はその「メタバース」のひとつである『セカンドライフ』に参入している会社「株式会社メタバーズ」。Googleで「メタバース」って検索すると、一番先頭に「株式会社メタバーズ」が出ちゃった挙句、そのサイトの冒頭でで「メタバースは、バーチャルワールド情報サイトです。」って書いちゃってるあたりが、ある意味最も「メタバース」の一般への理解を妨げているのではないかと。