てすかとりぽか

最近はポケモンのことを書く場所です。

『クローズZERO II』 逆説の風刺

新しいテレビに買い換えて、早速観たのがこの映画。
だって、TSUTAYAの宅配レンタルがこれよこしてきたんだもん…。
ちなみに、二本よこしてきたうち、もう一本は『その男 ヴァン・ダム』とか…。

クローズZERO II

2009年の日本映画。三池崇史監督。

今回はよその不良学校「鳳仙学園」との抗争を描いた、ファンタジー映画。今回「も」バイオレンス映画ではなくファンタジーです。高校同士の喧嘩というか、もはや惑星間、いや恒星間戦争のような壮大さで描かれるスペクタクル映画です。最近、スペクタクルって意味がよくわかりませんが。たぶんそういうアレだと思います。

あいかわらず、殴っても蹴っても人死にが出ないどころか怪我すらしません。ただ、HPがなくなるとしばらく「せんとうふのう」になったり、しっぷをはっておくとそのうち回復するといった、きわめてシンプルかつわかりやすいルールで構成された異世界のお話です。(詳細なルールは『クローズZERO』を参照のこと。)

あ、でもルールをいくつか追加・修正しなければなりませんね。

■アップデート情報
・ピストルで撃たれても死なないようにしました。
・敵の学校の屋上に上ると勝利するようにしました。
・精神コマンド「おんなのうた」の効果を弱体化しました。

ピストルの件は、あくまで強キャラ限定なのかもしれません。でも、屋上に上るとクリアとかどこから出てきたルールなんだろう、本人たちも最初は校庭で決着つけるって言ってたのに、いつのまにか校内に入って雑魚や中ボスを倒しながら屋上を目指す、『スパルタンX』みたいなゲームになってるし…。

そもそも、「鳳仙学園」の人たち、不良じゃないですよね。
喧嘩している以外は、不良っぽい描写は一切されてないですし。
全員坊主頭で学校指定の上履きはいてる時点で校則守りまくりの優等生です。

そんな優等生たちが『ボコスカウォーズ』みたいに埋めつくしている狭い廊下を、千切っては投げしながら進む「鈴蘭高校」最強軍団。数々の犠牲を払いながらたどりついた屋上へ向かう階段の前には、机や椅子を幾重にも積み重ねたバリケードが!なんと、これではそう簡単に屋上にたどり着くことができない!

屋上の鍵閉めておくだけでいいのに。

いや、たぶんそこまでやったらさすがに不良世界のルールに触れるのでしょう。(もしくは、鍵は先生がもってるからダメなのでしょう。)そして、そのバリケードを抜けた先にも、ラスボス前の中ボスたちが待ち構えていたのです。『ドラクエ2』でいうところのパズズとかべリアルみたいな感じで。

お前らどっから入ったんだよ。バリケードあったのに。

いや、たぶん、ちゃんとラスボスの人と中ボスの人を配置し終わった後で、机と椅子を幾重にも積み重ねてバリケードを作ったんでしょう。すごいマメですね。でも、不良の喧嘩で「篭城戦」っていう発想はどうも…。ていうか屋上にいたラスボスの人は、さっきまで下の教室で闘ってましたよね…。もう何がなんだか…。

まぁ、ファンタジーだからいいか。

あと、前作ではラストバトルのBGMとして物語を盛り上げるために使われた黒木メイサの歌ですが、今回は挿入歌とも言えないほど、完璧にただの時間稼ぎ効果としての弱体化が見られました。ほんと、あのキャラ自体が何のためにいるのかさっぱりわからなくなりました。お色気担当ですらありませんし。

続編映画によくあることですけどね。

そして、物語のクライマックスは、屋上でのタイマン勝負。結局今回もボス同士の一騎打ちになっちゃうんですね。そこに至るまでの仲間集めや小競り合いはどうでもよくなってしまうあたりも、前作を手堅く踏襲していますね。でも、個人的な一番の見所は、エンドロールの最後に表示された、この一文でした。

「この物語はフィクションです。未成年者の飲酒・喫煙は法律で禁止されています。」

暴力は禁止されてないんでしたっけ。

昔、『サウスパーク』の「Good Times With Weapons」というエピソードで、"アメリカの社会は性描写に関しては厳しく反応するくせに、暴力表現に関しては驚くほど寛容すぎる"という風刺表現がありました。事実、アメリカはそうした社会風潮が対イラク戦争を激化させ、結果として同時多発テロという悲劇にも見舞われました。

本作ラストの一文も、"暴力について寛容すぎるのではないか?"というパラドックスなのではないでしょうか。

暴力のすべてが許される世界、即ち「鈴蘭高校」を卒業した彼らは、本来暴力が許されないはずの「社会」という異世界へ旅立っていきます。しかし、その「社会」で許されないのは飲酒と喫煙のみで、暴力に対してはあいも変わらず寛容だった。そんな風刺が効いた社会派映画なオチに見えるのは自分だけなのかなあ。