てすかとりぽか

最近はポケモンのことを書く場所です。

『X-MEN: ファースト・ジェネレーション』 アニソン部屋とそうじゃない部屋

今更ですが観てきました。

ていうか暑すぎて日中外出できなくて、日が暮れてから近所の映画館に行くしかないっす。で、近所の映画館はスーパーの屋上にあるようなソレなので、家族向けな奴しかやってないのです。『デンデラ』とか『ムカデ人間』は勿論のこと、『127時間』や『鋼の錬金術師』すらやってない。んでもコレ観たかったからいいです。

個人的にシリーズ中いちばん好きかもしんない。ネタバレはほとんどなしの方向です。

X-MEN: ファースト・ジェネレーション

2011年のアメリカ映画。マシュー・ヴォーン監督。

アメリカで人気の漫画の『X-MEN』の話のソレができる前の話。X-MENのリーダーであるプロフェッサーXと、その敵ブラザーフッドの親玉マグニートーが出会い、別れるまでのお話です。そして、マグニートーのあのヘルメットの秘密にも迫っていきます。そして、プロフェッサーXの頭がハゲた理由は語られるのだろうか?

“ゲイゲイしいお話”とは聞いてはいましたが、いやほんとまじでゲイゲイしいです。

製作に関わっているブライアン・シンガーがそうだとか、将来のマグニートーを演じているイアン・マッケランとかそうだからという話を抜きにしても。一度そういう視点で見始めてしまうと、もうチャールズ(プロフェッサーX)とエリック(マグニートー)の一挙手一投足一言一句がもうそういう風に認識されてきます。

二人が登場するシーンに出てくるオブジェは、フロイトばりに“性欲とセックスの象徴”に見えます。

黒光りする音速戦闘機も、球形のテレパシー増幅装置「セレブロ」も、チャールズが頭にかぶるソレも、エリックが頭にかぶるソレも、エリックが能力を使ってチャールズに向けるパラボラアンテナも、エリックが水中から引っ張り出して天を仰ぐように水飛沫が滴たらせる潜水艦も、ぜんぶ“男根を象徴”してるように見えてきます。

エリック、結局あんだけ誘ってきたミスティークに指一本ふれないですしおすし。

というか、基本的に今作もミュータントという“マイノリティ”たちを描いた作品なものですから、現実世界の“セックスマイノリティ”であるゲイカルチャーに関するエッセンスは当然感じられてしかるべきなんです。というか、エリックが求めているのは“性差”なんかではなく、“個性”でつながることなんですよね。

エリックは、“マグニートーというコスプレをすること”を通じて、他者とつながろうとした。のですね。

大学の先輩が寄稿されていて拝読した『挑発するセクシュアリティ』という、セクシャルマイノリティやゲイカルチャーについて書かれたご本より、「性とコスプレ・コミュニケーション」という論稿の中に“コスプレとは、自ら着替え続けることで、常に新しいコミュニケーションを夢想し、渇望する行為である。”という言葉があります。

その意味するところ、“コスプレ”とは、単なる服飾嗜好や性転換願望に機縁するものではなく、キャラクターまたはそれが登場する作品に対する、自身の尋常為らざる嗜好を外部にアピールすることであり、同時にその自身と同レベルの嗜好を持つ他者とのコミュニケーションを獲得するための手段でもあるということです。

本作中で、お互いに“異名を名乗りあう”行為、“ユニフォームを着る”行為がまさにソレにあたります。

また、現実世界のコスプレイヤー達は“対象への嗜好”という根本的な目的および手段を強調するが故に、社会におけるコミュニケーションの媒介として、最も基本的な要素である“性差”さえ脱ぎ捨てています。厳密には、生物学的な性を殊更に強調した衣服を纏うことで、社会的性である“ジェンダー”を放棄しているといいます。

生物として、社会としての“性差”を脱ぎ捨てて初めて、“嗜好”だけで他者とつながることができると。

本作において、とりわけエリックは、“性差”を重視せず、“一般的な外見による判断”も重視せず、各人の能力、つまり“個性”を重要視しました。故にチャールズも一度は馬鹿にしていた“異名システム”に関しても、エリックは最初から賛同を示し、一番最初に自分コスをはじめたミュータントでもありました。

同じ思想を持った変わり者同士でつるみ、異名で呼び合い、性差を超えた絆で繋がる、それが彼の理想。

ソレは見る人が見ればやっぱり“ゲイっぽい”って話なんでしょうけど。個人的にはゲイっぽいだけじゃなく“オタクっぽい”っていうか、懐かしいですよねそういうの。学生時代のオタク系サークルっぽい感じで。カラオケ行ったら当然の如く“全部アニソン”だったりする。Bzとか入れると引かれちゃう感じ。

チャールズ(プロフェッサーX)も、まぁそういうの嫌いではない体をしてはいましたけど。

じゃあ、何故二人は袂を別ってしまったのか?という部分は話すとモロネタバレなので具体的には話しませんけど。オタク系サークルでカラオケに行ったら“アニソン部屋”と“歌謡曲もアリ部屋”に別れてしまったのに似てます。その中でさらに「ラルクはアニソンじゃねーがら!!」とか色々あります。

エリック「レイヴン、もう自分を隠さなくていいんだ。ジャンパーソンとか歌っていいんだ。」